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長野県栄村で活動するNPO法人です。被害や復興の状況を、理事である松尾真のレポートを元に更新していきます。

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復興には農地の整備が必要だと思います


 10日昼、法政大学の学生さんを連れて、久しぶりに四ッ廻りの田んぼに行ってきました。
 当初、軽トラで四ッ廻り地区の中を動くつもりだったのですが、横倉沢川に架かる橋が修復工事中で、橋と道路の間が離れていて車は通行できません。時間も限られていたため、やむなく四ッ廻りの入り口に近いところの田んぼの様子を見てきました。


●危険な農道

 まず、横倉沢川橋を越えてところから四ッ廻り地区に入る農道をご覧ください。下の写真ですが、四つ廻り地区側から撮影しました。


こちらはもう少し手前(四ッ廻り側)から撮ったものです。
 
 地震で壊れた道を応急復旧だけしたものですが、元々、じつの細い道で軽トラ1台がやっと通れる程度。けっして安全な道とは言えないものです。この道を原形復旧しただけでいいものでしょうか。少なくとも幅■mの農道として整備し、安心して農作業に向かえる環境を整える必要があります。


● 機械を入れるのが困難な田んぼ

 つぎは、四つ廻りに入ってすぐ左下にある田んぼ(「A」)です(上写真)。
 この田んぼは青倉受託作業班が2006年から受託耕作しているものです。私にも馴染みが深い田んぼで、2007年春、広瀬明彦さんの田植えを手伝いました。
 変な形をしています。典型的な未整備田です。受託作業班が耕作しているということは耕作放棄の危険があったということです。この日、この田んぼの周りを写真に撮っていて、その理由がよくわかりました。先の写真とつぎの写真をよくご覧ください。

 この田んぼに入る道は四つ廻りの農道の「幹線」から急な坂を下るもので、トラクターはその急坂の途中で方向を90度曲げて入らなければなりません。非常に危険です。乗用の田植え機は無理で、歩行型を使うしかありません。つまり、危険なうえに作業効率が非常に悪いわけです。
 だからこそ、高齢化が進むとき、真っ先に耕作放棄地になる可能性が大きいわけです。あるいはまた、今後、受託作業班がより多くの田んぼも耕作することになったとき、こういう危険で作業効率の悪い田をはたしてかまうことができるでしょうか。
 さらに、上の田と農道の「幹線」を挟んで山側にある田んぼ(「B」)をご覧ください。

 2枚の田んぼが見えていますが、さらに写真上方にもう1枚あります。農道「幹線」から歩いて手前の田んぼに入っていく道は下の写真のとおりです。

 歩いて上るにも足が滑りそうな急坂で、とても機械を入れられるものではありません。つまり、ここの3枚の田んぼは、機械を直接に入れることができるのは「写真上方にもう1枚あります」と先に書いた田んぼだけであり、残りの2枚は田越しでしか機械を入れられないのです。この3枚、写真を見ればあきらかなように、さほど高さが変わりません。この3枚の田を1枚にまとめることができれば農作業はグーンとやりやすくなりますが、現状のままでは耕作放棄に至る危険があると思われます。
 こうした事例は、圃場が整備されていない四ッ廻りの田んぼではけっして珍しいものではなく、その一端にすぎません。


● 農業にとって復興とは何か
 以上に紹介した田んぼはいずれも今次震災で被害を受け、農地復旧工事がすでに行われたものです。
 この復旧工事で、この地区の農地と農業を復興できると言えるでしょうか? 答えはあまりもはっきりしています。NO! です。
 復興とは、震災をのりこえて地域がこれからの50年、100年を活気ある、元気な地域として再生していくことだと言い換えることができるでしょう。
 そうであるならば、被災農地を原形復旧するだけにとどめず、この四ッ廻り地区を、農道を安全が確保される■m道路にすることを1つの基軸において、全面的に整備することが必要です。
 四つ廻り地区の関係者の間でもその認識は共通していると思われます。
 しかし、全面的な整備となれば、多額の費用がかかり、通常は費用の5割が農家の自己負担となります。また、地権者と現耕作者が異なるケースが多々あり、手続きも非常に煩雑なものになります。だから、みなさん、二の足を踏まれることになります。


● 復興交付金事業の活用を
 本レポートの前号で紹介した「復興交付金事業」は、こういう復興事業に活用できると考えられます。
 まず、「農山漁村地域復興基盤総合整備事業」で「県の発意により行うことができる事業」として「区画整理」を追加するとされています。
 また、権利関係の整理にあたっては、「復興整備事業の円滑化のための土地に関する特例」が導入され、事業実施主体による筆界特定の申請が可能とされ、測量・調査も可能になります。
 復興交付金事業とすることができれば、地元負担はゼロとなります。


● 専門家の支援を得て、総合的な計画整備を
 仮に四つ廻りの農地整備を行うとなった場合、それはたとえば先のAの田んぼやBの田んぼを少し手直しするというものではないと考えます。四つ廻り全体を対象として、総合的に考えて、今後50年、100年、耕作できる農地に整備するということです。
 それには専門家による支援・指導が不可欠だと思います。
 

●「社会的共通資本」としての位置づけを
 また、都市の人たち、あるいは第2次・第3次産業で苦労している人たちからは、「なぜ、農業ばかり、補助金が出るのだ。農地は私有財産ではないか」という反発の声が出ることも考えられます。
 私はそういう意見に対しては「農地は単なる私有財産ではなく、社会的共通資本だ」ということをはっきりと言うべきだと考えています。「社会的共通資本」とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、簡単にいえば、「農地は農業の多面的機能ということが言われるように、国土を保全し、自然環境を守る役割を果たしていて、社会全体の財産だ」ということです。
 東日本大震災は、日本の社会がこれからも成り立っていくのかという深刻な問いかけをしています。だからこそ、農地を農地として守り、農業がいきいきと続けられる環境を整えることが社会全体の要請なのです。
 
 今回、四ッ廻りを取り上げたのは、あくまでも、私自身にとって馴染みが深い地区を事例として農地整備の復興事業の大事さを訴えたかったということで、四ッ廻り地区関係者のみなさんに「こうしよう」と押し付ける意図は毛頭ありません。これをひとつの問題提起として、復興にむけての議論が活発になれば、と願ってのものです。ぜひ、こういう考えもあるということで、ご検討いただければ幸いです。


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