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栄村ネットワーク
長野県栄村で活動するNPO法人です。被害や復興の状況を、理事である松尾真のレポートを元に更新していきます。

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田んぼを守る

 田んぼはまだ雪の下にあって、その被害状況はわかりません。しかし、昨日報告したように農道が崩れている箇所があることははっきりしています。中条川上流での山崩れは森地区の田んぼにいく水路をのみこんでしまいました。あるいは、今日、横倉集落の田んぼを見てきましたが、田んぼの上の雪にはっきりとわかるクラックが入っていました。


 下上写真で田んぼの雪の中を走るクラックがはっきりと確認できます。このクラックは右写真の道路面のクラックとつながっています。道路面はわずかですが段差が見えます。そのことから、クラックは雪だけでなく、田んぼにまで及んでいることが推測できます。



 田んぼは平らであることが絶対的要件です。田んぼの中に段差などができたら、そこから水が漏れ出し、水稲作はできません。今年は米作りができないという田んぼがかなり出てくるものと思われます。
 みなさん、「田んぼが無事であってほしい」と祈りながらも、ある程度の覚悟を決めておられます。

 では、今年、田んぼができないとなった場合、みなさんはどうされるのでしょうか。
 「田んぼをやめる」と言う人は基本的にいないでしょう。その場合、田んぼ作業をまったくしないというのではありません。

 田んぼや水路の復旧工事を行う一方、それだけでなく、田起こし(=田んぼを耕す)、草刈りの作業をしっかりとやるのです。米作りができないからといって、田んぼを放置しておくと、草が生え、伸び、やがてはススキのようなものまで生えてきます。ススキが生えてしまうと、根が深く大きいので、いざ田んぼをやろうというとき、田んぼが大きな穴ぼこだらけになってしまいます。ですから、ススキが生えるような状態には絶対にしてはならないのです。


青倉集落西山田の棚田
 
 田んぼだけでなく、畔も法面も同じです。水路も、修復を要する箇所に手を入れるだけでなく、きちんと掃除をし、草が生えたり、落ち葉が溜まったりすることがないように維持作業をきちんとやらなければなりません。


標高1,000mの位置する野々海池。ここから青倉の棚田へ水路がつながっている
   (撮影は昨年5月23日。5月下旬でも池の大半は雪で覆われています)

ちゃめ仕事をご存知ですか?
 では、その草刈りなどの仕事をいつやるのか。
 栄村には「ちゃめ」という言葉があります。「朝飯前」という意味です。「ちゃ」が朝食を指し、「め」は「前(まえ)」がつまってものでしょう。

 田んぼの季節になると、みんな、朝5時には田んぼに行きます。通常ならば田んぼの水管理をしたり、草刈りしたりします。担い手の多くは勤めをもっています。5時から7時まで田んぼで農作業をし、家に帰って朝ご飯、それから勤めに出るのです。

 今年、田んぼがだめという場合でも、この「ちゃめ仕事」をやり続けることになります。
 飯山市あたりの仮入居の住宅に5月以降も住み、そこから村の勤め先に通うというのでは、この「ちゃめ仕事」ができなくなります。

 農業構造改革論者がしばしば「兼業農家は土日だけの作業」などと言いますが、とんでもない話です。日々、「ちゃめ」をやり、夕刻には勤めが終わると、田んぼに行って水管理(=「水見(みずみ)」)をやるのです。
 ですから、仮設住宅にせよ、家の再建にせよ、集落を離れては成り立たないのです。

 みなさんは、このような日々の農作業と固くむすびついたむらの暮らしをどうお考えになりますか。「効率の悪いもの」と考え、切り捨ての対象にされますか?
 私は、いま、原発大災害で現代文明が根底から揺らいでいる今だからこそ、こういう大地とかたく結ばれた農のある暮らしというものを大事にしなければならない、価値あるものとして守り抜かなければならないと思うのです。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事