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栄村ネットワーク
長野県栄村で活動するNPO法人です。被害や復興の状況を、理事である松尾真のレポートを元に更新していきます。

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「地域資源って、何だい?」

 「地域資源」あるいは「地域資源の活用」が話題になるとき、たとえば、「栄村は水が豊富だから、小規模水力発電をやってみたら」というようなご意見を聞くこともあります。
 しかし、それには専門的な研究と設備投資・工事が必要となります。
 私は、そういうものも大事だとは思いますが、まず、もっと身近にあって、その気になれば、栄村の人の多くが自分の力を発揮できるものを発見することが最も大事なことだと思っています。以下、そういう事例を紹介します。

天地の斉藤克己さん宅の航空写真


● 天地の斉藤克己さんのお家
 2月28日、村を訪れた松本大学松商短大の学生さんたちを連れて、天地(てっち)の斉藤克己さん宅を訪ねました。
 村を訪れる人たちを私が斉藤克己さん宅に案内するのは、もう百回をはるかに超えているのではないかと思います。今年の2月だけでも京都精華大学の学生、FM長野のパーソナリティなど、4〜5回に及ぶと思います。
 5〜10月の時期であれば、山の上にある克己さんの畑に案内しますが、冬はお宅にお邪魔するだけです。とても好評です。


勝美さん手製の天井焼を食べる学生さんたち   

 いったい、克己さんのお家に何の「地域資源」があるのでしょうか?
 第1は、とうちゃんの克己さん、かあちゃんの勝美さんの人柄です。なにか特別なお話をしていただくわけではありません。でも、訪れた人たちは、気さくに話す克己さん、勝美さんとの会話を楽しみ、お二人の魅力に惹かれ、そこから栄村の魅力に魅せられていきます。
 第2は、勝美さんがお茶のみに出してくれる漬物や、ちょっとした煮物がとっても美味しいのです。何かを特別に用意していただくというのではありません。でも、みなさん、感激してくださいます。28日は天井焼であり、地豆でした。
 克巳さん・勝美さん宅とは違いますが、3年前の6月のことだったでしょうか、大久保の阿部マスミさんのお宅でお茶のみに出していただいたワラビがとても美味しくて、それで栄村がすっかり気に入り、もう10回、20回と栄村を訪れて下さっている人がおられます。震災後だけでももう10回近くになるでしょう。
 第3は、克巳さん宅の立地、敷地内の様子です。
 ご存じの方も多いと思いますが、克巳さん宅とその畑は、勝美さんの亡きお父      
さんが戦後、独力で開墾されたものです。栄村の中でもとくに「僻地(へきち)」と言ってもいいような場所にあり、冬ならば、「えっ! この先に家があるの?」と思うような深い雪の中を入っていきます。それが驚き(=異体験)となり、魅力となるのです。

克巳さん宅の玄関前にて

 本記事のはじめに克巳さん宅の航空写真を載せました。そもそもは牛舎として建てられ、現在は作業所兼倉庫として使われている建物が住家に隣接してあります。訪れた人がその中を見せていただくこともあります。鶏が平飼いされています。
 こういう農家の敷地というものを都会の人は見たことがありません。ですから、地震被害の説明で、「農家の被害は住宅だけでなく、作業所も、農機具も被害を受けて、…」と説明されても、都会の人にはその様子が想像できません。克巳さんのお宅などを訪れてみて初めて、イメージをつかむことができるのです。
 
 克巳さん・勝美さんはこういう受け入れを商売としてされているのではありませんが、2009年度、2010年度は栄村ネットワークが「山村college(カレッジ)」という事業を行ない、克巳さん・勝美さんを「ふるさと先生」と位置づけて、謝金(講師料)をお支払いさせていただきました。
 訪れる人は、克巳さん宅でのお茶のみの機会を得られるのに対して、「旅行者」として1人500円くらいの支払いをすることを当然と考えられます。その場で克巳さんにお支払いするとなると、ちょっとギスギスした感じになるかもしれませんが、そうではなく、旅人はむら巡りを案内する栄村ネットワークにガイド料を一定額支払い、栄村ネットワークがお世話になったむらの人たちに謝金をお支払いするという形になります。
 こういうことが「地域資源」の活用の具体的な姿であり、私が推奨している“むらたび”のあり様です。


●畦草刈りの美しさが栄村の地域資源
きれいに畦草刈りされた田(昨年7月、長瀬にて)

 栄村の田んぼはとてもきれいです。なぜ、“きれい”なのか?棚田が多いことも1つの要因です。
と同時に、畦の草がしっかり刈られていることがとても大きな要因なのです。2009年1月、栄村全域が「にほんの里100選」に選ばれました。選定に関わった人からこんな話を聞きました。
「いくつかの村、町を見てから栄村を見に来たが、栄村の田んぼはよく手入れされていて、景色が美しいだけでなく、“人びとの営み”がしっかり感じとられた。よそは荒れた田や草が伸び放題の田が多かったから100選の対象外とした。」
 こんなお話です。
 残念ながら、畦草刈りをしっかりやったからといって、お米の値段が上がるわけではありません。
 でも、栄村を訪れた人を、きれいに畦草刈りされた田んぼに案内すると、その田んぼがすっかり気に入り、昨今の標準米よりも高い価格でお米を買ってくださるようになります。いまではご存じの人も多いかと思いますが、「青倉米」というのを精米1俵(60kg)3万円で年間契約していただくことができている背景は、こういうことなのです。
東京・青山のマーケットでの青倉米の販売 
 畦草刈りには少なくとも3つの意義があると思います。1つは、草を刈ることによって畦が強くなること。2つは、田んぼのまわりをすっきりさせることで病虫害の発生を減らすことができること。そして3つに、美しい 田んぼ景観が得られることです。

青山での直売の様子を見学する中越の人たち
 ですから、畦草刈りは立派な仕事として報酬の対象となるのです。いままで畦草刈りの労賃を米価格に算入されたことはないでしょうが、これからはそれを参入して米価格を設定できるし、そうすべき時代なのです。
 「自分は畦草刈りをしっかりやってるよ。おらの田んぼの米はうめえよ」と思っている人がたくさんおられることでしょう。是非、「〇〇米」という名前を考えて、ブランド化してください。私はいくつものブランド米の産直を直接に担うことはできませんが、ノウハウをお教えすることはできます。
 まさに「地域資源」の発掘・活用そのものです。


●「そっけな小さなこと・・・」という考えを脱して
 ここまでに書いたことはいずれも“小さなこと”です。
 ですから、「そっけな小さなことでは“仕事”にならない。儲からない。そんなことで復興・再生なんか出来ないだろう」と思われる人も多いのではないかと思います。
 しかし、ここにポイントがあるのです。“小さなこと”が大事なのです。
 たとえば、観光について考えてみましょう。
 “大きなこと”を追求すると、つぎのようなことになります。
● 観光入れ込み客数を1万人増やそう
↓
● 商品開発して、大手旅行社と提携しよう
↓
● 50人、100人のツアーを大手旅行社に売ってもらう

 しかし、大手旅行社は、「栄村が大好き」だから栄村観光商品を売ってくれるのではありません。売り上げを伸ばすために、たえず新商品を探しています。ですから、逆にいうと、何年も何年も、栄村商品を売り続けてくれるわけではありません。
 そもそも、大手旅行社のツアー商品をめぐっては、各地からの売り込みが激しく、そんなに簡単に1万人もの誘客を実現してくれるわけではありません。
 
 それに対して、“小さなこと”はどうでしょうか。
 今日のレポートで紹介したケースは1組5〜6人程度、多くても15人程度の旅です。
 これで1万人に達するには、1組15人であれば、年間667組も必要です。1日2組ですね。大変です。
 でも、こういう“むらたび”を世話する人手が村に5〜6名いたら、必ずしも実現できないことではありません。

09年8月、「にほんの里100選」ツアーで訪れた人たち

しかも、こういう旅に来られる人は、「栄村の季節、季節を楽しみたい」と言われる人が多いので、一度来ていただけると、年間数回訪れていただけるかもしれません。 (この中からリピーター、青倉米購入者が誕生した)
 また、「栄村ファン」、さらにもっといえば「〇〇集落ファン」、「〇〇さん宅ファン」が生まれ、ひいては「村外村民」になってくださいますので、リピーターが確実に増えます。
 
 ここまでに書いてきたようなことが、「地域資源の活用」であり、栄村が集落の復興を軸にして、復興・再生していくことができる道なのではないかと、私は考えています。
 私はむらの中をずいぶんと走り回り、いろんなお家をお訪ねしていますが、それでもよく知っている集落は限られています。今後、みなさんからお知恵をお借りして、もっともっとむらのいろんなところを知り、栄村の地域資源活用に努めていきたいと思っています。よろしくお願いします。


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