農地復旧で画期的な前進
- 農業再建問題
- 2011.07.11 Monday
役場(災害第2係)は先週末から農地復旧事業についての集落説明会を順次行っています。10日午後には小滝集落の説明会がありました。
今回の説明で、国の復旧事業の方法等をめぐって、画期的な前進があることがあきらかになっています。
説明によれば、
1) 復旧事業の対象となる田んぼについて、クラック等が顕著に見られる部分に限って復旧を行うのではなく、その田んぼ全体を修復するようにする
2) 復旧作業の方法として、表土をいったんすべて取り除き、耕盤を60cmほど掘り下げてクラックを埋めて均(なら)し、固める。そして表土を戻し、均して転圧をかける
という方法をとるとのことです。
上の2)の方法によって深くまでクラックが入っている地震災害に対応することができ、また1)の方法によって田んぼ全体の均平を確保することができます。
こうした復旧方法は阪神・淡路大震災や中越大震災では見られなかったもので、地震災害に対応する復旧事業がようやく認められるようになったのです。じつに画期的なことです。

被害のある田んぼの全体が復旧工事の対象に:写真の田んぼはいったん中畦がつくられた。当初の話では中畦の右側だけが復旧工事対象だったが、今回の査定計画で田んぼ全体が復旧工事の対象となった。
もちろん、これはまだ査定計画段階の話ですので、国の査定、とくに財務省の査定を通ることが必要です。国への働きかけを強め、この査定計画に盛られた復旧事業が実現されるようにさらに努力せねばなりません。
〈住民−役場−専門家の連携の見事な成果〉
農地復旧をめぐるこの画期的な前進は、復旧・復興で求められる住民−役場−専門家、3者の連携の賜物です。
この3者連携にはいくつかのターニングポイントがありました。

第1は、4月26日の木村和弘先生を囲んでの学習会です(上写真)。参加者は10数名と限られていましたが、木村先生が〈農地・農業被害の特質と復旧・復興のあり方〉について講演され、また住民から質問や意見が次々と出され、素晴らしい学習会になりました。
第2は、5月初めの小滝復興プロジェクトの取り組みです。
木村先生、内川先生を招いての住民自身での田んぼ被害調査、中越大震災体験者との交流(若栃集落の細兼さん)、小滝の住民自身によるクラック掘削調査、そして「作付は約3割程度にとどめ、被害を受けた田んぼは徹底復旧する」という小滝の人たちの決断です。

5月3日の小滝での調査(木村・内川両先生、森川係長、高橋健さんも参加)
第3は、役場災害第2係と木村先生らの見事な連携です。
とくに重要だったのは5月24日、査定計画作成のための県の調査が始まる前に、災害第2係の要請に応えて、木村先生が県農地整備課、長野県土地改良連合会(長土連(ちょうどれん))の人たちを前に、地震による農地被害の特性等についてレクチャーをされたことです。これによって県職員や長土連職員の認識が一変し、今回の画期的な前進に直結する被害調査方針が確定したのです。小滝をはじめとする多くのところで、国の災害復旧事業の対象として認定される田んぼの面積が大きく拡大しました。
小滝の取り組みに関してはいろんな機会に紹介していますので、ここではこれ以上の言及をしませんが、専門家と行政の取り組みについてもう少し述べたいと思います。
<専門家の果たすべき役割>
木村先生、内川先生はこの間、何回、栄村に足を運んでくださったことでしょう! しかも、お二人が勤務され、住んでおられる南箕輪村からは車でも片道2時間半以上かかります。
お二人の行動を支えたものは、学者の学問上の関心を超えるものだと私は受けとめています。「復旧・復興に役立ちたい」という強い思いであり、「中越の復旧・復興のレベルよりも後退してはならない。それよりも前進した復旧・復興を実現する」という強い思い、決意だと思います。

左端が木村先生、右端が内川先生
以前に指摘・批判したことがありますが、自分の学問研究の利益のために被災地にずかずかと土足で入り込む「専門家」が数多くいます。木村先生や内川先生のスタンスはそれとはまったく異なります。被災住民の立場に立ちきった活動です。
また、これは〈大学関係者は大震災に際してどうあるべきか〉を鮮烈に提起するものでもあると思います。多くの大学と大学関係者は、「学生を災害ボランティアとして送り込む」ことが大学の使命であるかのように思い込んでいます。たしかに局面によっては災害ボランティアの派遣が重要だという場合もあります。しかし、応急局面から復旧・復興局面に移行した中では、単なる災害ボラ派遣はアリバイ作りの域を出ません。大学に身を置く専門家・研究者ならば、その専門性を生かす支援の方法・内容がなければおかしい。大学関係者は木村先生らの活動から徹底的に学んでほしいと思います。
<災害第2係の働き>
災害第2係は、そもそも「なんとしても田んぼの復旧を」という強い思いをもつ集団として動いていたと思いますが、とくに住民の思いを受けとめ、連携するという点で他に類例をみない活躍をされました。
とくに特筆すべきは、小滝の住民が実際にクラックを掘って、亀裂が深い所にまで達していることを災害第2係に報告したのをうけて、自ら村内各地の田んぼでのクラック掘削調査を実施されたことです。
また、木村先生と災害第2係の連携も特筆事項です。
私はこのレポートで時には行政(役場)に対する批判をあえて書いてきましたが、その思い・目的は行政を批判すること自体にあるのではなく、「住民の思いを受けとめてほしい」、「住民と力を合わせる動きをしてほしい」という思いでした。災害第2係の人たちはまさにそのことを実現したのです。

災害第2係によるクラック調査
私は5月末に「あなたの田んぼは大丈夫ですか?」というパンフレットを執筆し、村内全戸に配布しましたが、あの原稿はじつは事前に木村先生だけでなく、災害第2係長・森川さんにも校閲していただきました。また、私が本レポートで田んぼの被害状況、二次災害の状況を報告するうえでは、高橋健さんにさまざまなアドバイスをいただきました。さらに、藤木利章さんは「俺も百姓だ」と言いながら住民の話をよく聴き、住民の心の支えになってくれています。
実践的住民自治、住民と行政の協働の素晴らしい実践例がここにあります。
メディア関係者へのお願い
農地復旧事業の国による査定が7月19日から行われます。
冒頭に記したとおり、国とくに財務当局が今回の査定計画を認めるかどうかが決定的な問題として浮上しています。
メディア関係者は7月19日、この査定を徹底取材してほしいと思います。新聞やTVが今回の査定計画の重要性、画期性を理解し、後押しする報道をしていただきたいと思います。それが復旧・復興をめぐるメディアの役割、貢献だと思うのです。よろしくお願いします。
解説:農地復旧費の自己負担割合について
今回の説明会では、国による災害復旧事業の補助率−農家の負担割合について、
国 ―― 90%
村 ―― 5%
農家 ―― 5%
と説明されています。これに間違いはありませんが、これはほぼ確定している補助率です。じつは、今後、さらに補助率が引き上げられ、農家の自己負担が軽減される可能性があります。
90%の補助は「暫定法」(農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律)に基づくものです。
栄村は今回、激甚災害地域に認定されていますが、その場合、上記の暫定法により算定された補助の残額(市町村・農家の自己負担部分)について、さらに国の補助が嵩上げされる仕組みがあります。たとえば補助残額が1戸当たり1万円以上2万円未満の場合は残額の70%を国が補助、3万円以上の場合は90%を国が補助するというものです。
ただし、この補助嵩上げの指定を受けるには、
当該市町村内の災害復旧事業の査定事業費 > 当該市町村の農業所得推定額×10%
という要件を満たすことが必要です。
栄村の今次被害がこの要件を満たすことはあきらかですが、実際に国の査定事業費が確定しないとこの要件を満たしているとの最終判断ができません。
したがって、現時点では「国90%、村5%、農家5%」とされているわけです。
災害第2係でもこのことをよく承知されています。これから年末(年度末)にむけて算定が行われるはずですので、農家のみなさんはよく注視してください。
今回の説明で、国の復旧事業の方法等をめぐって、画期的な前進があることがあきらかになっています。
説明によれば、
1) 復旧事業の対象となる田んぼについて、クラック等が顕著に見られる部分に限って復旧を行うのではなく、その田んぼ全体を修復するようにする
2) 復旧作業の方法として、表土をいったんすべて取り除き、耕盤を60cmほど掘り下げてクラックを埋めて均(なら)し、固める。そして表土を戻し、均して転圧をかける
という方法をとるとのことです。
上の2)の方法によって深くまでクラックが入っている地震災害に対応することができ、また1)の方法によって田んぼ全体の均平を確保することができます。
こうした復旧方法は阪神・淡路大震災や中越大震災では見られなかったもので、地震災害に対応する復旧事業がようやく認められるようになったのです。じつに画期的なことです。

被害のある田んぼの全体が復旧工事の対象に:写真の田んぼはいったん中畦がつくられた。当初の話では中畦の右側だけが復旧工事対象だったが、今回の査定計画で田んぼ全体が復旧工事の対象となった。
もちろん、これはまだ査定計画段階の話ですので、国の査定、とくに財務省の査定を通ることが必要です。国への働きかけを強め、この査定計画に盛られた復旧事業が実現されるようにさらに努力せねばなりません。
〈住民−役場−専門家の連携の見事な成果〉
農地復旧をめぐるこの画期的な前進は、復旧・復興で求められる住民−役場−専門家、3者の連携の賜物です。
この3者連携にはいくつかのターニングポイントがありました。

第1は、4月26日の木村和弘先生を囲んでの学習会です(上写真)。参加者は10数名と限られていましたが、木村先生が〈農地・農業被害の特質と復旧・復興のあり方〉について講演され、また住民から質問や意見が次々と出され、素晴らしい学習会になりました。
第2は、5月初めの小滝復興プロジェクトの取り組みです。
木村先生、内川先生を招いての住民自身での田んぼ被害調査、中越大震災体験者との交流(若栃集落の細兼さん)、小滝の住民自身によるクラック掘削調査、そして「作付は約3割程度にとどめ、被害を受けた田んぼは徹底復旧する」という小滝の人たちの決断です。

5月3日の小滝での調査(木村・内川両先生、森川係長、高橋健さんも参加)
第3は、役場災害第2係と木村先生らの見事な連携です。
とくに重要だったのは5月24日、査定計画作成のための県の調査が始まる前に、災害第2係の要請に応えて、木村先生が県農地整備課、長野県土地改良連合会(長土連(ちょうどれん))の人たちを前に、地震による農地被害の特性等についてレクチャーをされたことです。これによって県職員や長土連職員の認識が一変し、今回の画期的な前進に直結する被害調査方針が確定したのです。小滝をはじめとする多くのところで、国の災害復旧事業の対象として認定される田んぼの面積が大きく拡大しました。
小滝の取り組みに関してはいろんな機会に紹介していますので、ここではこれ以上の言及をしませんが、専門家と行政の取り組みについてもう少し述べたいと思います。
<専門家の果たすべき役割>
木村先生、内川先生はこの間、何回、栄村に足を運んでくださったことでしょう! しかも、お二人が勤務され、住んでおられる南箕輪村からは車でも片道2時間半以上かかります。
お二人の行動を支えたものは、学者の学問上の関心を超えるものだと私は受けとめています。「復旧・復興に役立ちたい」という強い思いであり、「中越の復旧・復興のレベルよりも後退してはならない。それよりも前進した復旧・復興を実現する」という強い思い、決意だと思います。

左端が木村先生、右端が内川先生
以前に指摘・批判したことがありますが、自分の学問研究の利益のために被災地にずかずかと土足で入り込む「専門家」が数多くいます。木村先生や内川先生のスタンスはそれとはまったく異なります。被災住民の立場に立ちきった活動です。
また、これは〈大学関係者は大震災に際してどうあるべきか〉を鮮烈に提起するものでもあると思います。多くの大学と大学関係者は、「学生を災害ボランティアとして送り込む」ことが大学の使命であるかのように思い込んでいます。たしかに局面によっては災害ボランティアの派遣が重要だという場合もあります。しかし、応急局面から復旧・復興局面に移行した中では、単なる災害ボラ派遣はアリバイ作りの域を出ません。大学に身を置く専門家・研究者ならば、その専門性を生かす支援の方法・内容がなければおかしい。大学関係者は木村先生らの活動から徹底的に学んでほしいと思います。
<災害第2係の働き>
災害第2係は、そもそも「なんとしても田んぼの復旧を」という強い思いをもつ集団として動いていたと思いますが、とくに住民の思いを受けとめ、連携するという点で他に類例をみない活躍をされました。
とくに特筆すべきは、小滝の住民が実際にクラックを掘って、亀裂が深い所にまで達していることを災害第2係に報告したのをうけて、自ら村内各地の田んぼでのクラック掘削調査を実施されたことです。
また、木村先生と災害第2係の連携も特筆事項です。
私はこのレポートで時には行政(役場)に対する批判をあえて書いてきましたが、その思い・目的は行政を批判すること自体にあるのではなく、「住民の思いを受けとめてほしい」、「住民と力を合わせる動きをしてほしい」という思いでした。災害第2係の人たちはまさにそのことを実現したのです。

災害第2係によるクラック調査
私は5月末に「あなたの田んぼは大丈夫ですか?」というパンフレットを執筆し、村内全戸に配布しましたが、あの原稿はじつは事前に木村先生だけでなく、災害第2係長・森川さんにも校閲していただきました。また、私が本レポートで田んぼの被害状況、二次災害の状況を報告するうえでは、高橋健さんにさまざまなアドバイスをいただきました。さらに、藤木利章さんは「俺も百姓だ」と言いながら住民の話をよく聴き、住民の心の支えになってくれています。
実践的住民自治、住民と行政の協働の素晴らしい実践例がここにあります。
メディア関係者へのお願い
農地復旧事業の国による査定が7月19日から行われます。
冒頭に記したとおり、国とくに財務当局が今回の査定計画を認めるかどうかが決定的な問題として浮上しています。
メディア関係者は7月19日、この査定を徹底取材してほしいと思います。新聞やTVが今回の査定計画の重要性、画期性を理解し、後押しする報道をしていただきたいと思います。それが復旧・復興をめぐるメディアの役割、貢献だと思うのです。よろしくお願いします。
解説:農地復旧費の自己負担割合について
今回の説明会では、国による災害復旧事業の補助率−農家の負担割合について、
国 ―― 90%
村 ―― 5%
農家 ―― 5%
と説明されています。これに間違いはありませんが、これはほぼ確定している補助率です。じつは、今後、さらに補助率が引き上げられ、農家の自己負担が軽減される可能性があります。
90%の補助は「暫定法」(農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律)に基づくものです。
栄村は今回、激甚災害地域に認定されていますが、その場合、上記の暫定法により算定された補助の残額(市町村・農家の自己負担部分)について、さらに国の補助が嵩上げされる仕組みがあります。たとえば補助残額が1戸当たり1万円以上2万円未満の場合は残額の70%を国が補助、3万円以上の場合は90%を国が補助するというものです。
ただし、この補助嵩上げの指定を受けるには、
当該市町村内の災害復旧事業の査定事業費 > 当該市町村の農業所得推定額×10%
という要件を満たすことが必要です。
栄村の今次被害がこの要件を満たすことはあきらかですが、実際に国の査定事業費が確定しないとこの要件を満たしているとの最終判断ができません。
したがって、現時点では「国90%、村5%、農家5%」とされているわけです。
災害第2係でもこのことをよく承知されています。これから年末(年度末)にむけて算定が行われるはずですので、農家のみなさんはよく注視してください。



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