このコラムでは、日本の生きものを身近に感じていただけるよう、彼らの暮らしを紹介しています。
- 今日はぼく、ニホンイノシシだよ!
ニホンイノシシは、日本の里山など、低めの山の雑木林、広葉樹林に暮らしている生きものです。
草や茂みがたくさんある森や草原、水場の近くを生活の場所にしています。
- 特にね、隠れる場所になる薮(ヤブ)のある所がお気に入り。安心するの♪
ニホンイノシシの鼻の特徴
イノシシの鼻先は やわらかく、粘液で湿っていてます。
この湿った鼻の先の名称は「鼻鏡(びきょう)」。
鏡のように光って見える事からこう呼ばれています。
- 身近な動物だと、イヌやネコの鼻先も、鼻鏡なんだよ。
ニホンイノシシの鼻先は、柔らかくて、繊細な動きをします。
コミュニケーションにも鼻を使うほか、
触る・こする・突く・こねる、感触を確かめるなど
様々な動きに対応できる、万能な器官。
- 挨拶にも、鼻をつかうんだ。 ねぇねぇ おかーさーん♪
ニホンイノシシは「クジラ偶蹄目」の動物。
ニホンイノシシは、4本のヒヅメを持っています。
この、ヒヅメが4本(偶数)の生き物達は、偶蹄目(ぐうていもく)と言うグループ。
さらに、最新の分類学では「クジラ偶蹄目」と呼ばれるようになりました。
- ええ~! 「クジラ」ってどういうこと?
遺伝子を解析した結果、クジラの祖先も、イノシシやシカの祖先も、ずっと たどっていけば、同じ生き物だということが、わかったのです。
陸上に残ったのが、イノシシやシカ達。
水中へと生活の場を変えたのが、クジラ達と考えられています。
- 不思議だなぁ。生き物の進化って、奥深いねぇ…!
ニホンイノシシの足跡は?
さて、ヒヅメをもう少し詳しく見てみます。
ニホンイノシシが歩いたあとには、4本の蹄(ひづめ)の足跡がつきます。
中心の2本、大きな蹄は「主蹄(しゅてい)」
外側の2本、小さな蹄は「副体(ふくてい)」
といいます。
ちなみに、イノシシの足跡は、シカの足跡と、よくカタチが似ています。
- そうなんだ~! どうやって見分ければいいの?
見分けるポイントは、蹄の数。
蹄の跡が4本ならイノシシ、2本ならシカです。
- シカの副蹄(外側のヒヅメ)は、イノシシよりも高い位置にあるんじゃ。
- このため、歩いたときに足跡がつかないんじゃよ~。
ヒヅメは、爪のような薄い層
- ヒヅメはね、爪の一種なんだよ。
当初、ヒヅメというものは、中までぎっしりとヒヅメ(?)だと思ってたのですが、違うようです。
- ふむふむ…層になっている角質の部分の事が、ヒヅメなんだね。
ヒヅメはヒトの爪よりも厚くて大きく、歩行に特化した爪として進化してきました。
進化の過程で、指の骨や本数は少なくなり、指を使った細かい作業はできませんが、そのぶん早く走ることができるのです。
- ヒヅメのパワーで猪突猛進! ドドド~!
ニホンイノシシのヒヅメ、役割は?
中心の2本(主蹄)で体重を支え、外側の2本(副蹄)でバランスをとって移動します。
4本のヒヅメは人間で例えるなら、親指以外の4本の指。
その4本指でスッとつま先立ちをしているようなイメージです。
- 足を長く使える分、早く走れる体のつくりになってるんだよ♪
一方、接地面積が少ない足先で、全ての体重を支えるため、地面がやわらかい場所は苦手。
- だからイノシシくんは、雪の多い所や、豪雪地域にはあまり暮らしていないんだね。
- 体がズブズブしずんじゃうの。雪道は苦手…!
ニホンイノシシはどんなグループの生き物?
- ぼくは偶蹄目!(ぐうていもく) のグループなんだ
分類学では、それぞれの生き物は
〇〇目 → 〇〇科 → 生きものの名前
という順番で枝分かれをしています。さて、ニホンイノシシは…
偶蹄目 (ヒヅメが偶数のグループ) の →
イノシシ科 (のグループ)の →
ニホンイノシシ(種の名前)
…という分類になっています。
- 偶蹄目は、ヒヅメの数が偶数の生き物のグループなんだ。
ニホンイノシシの学名の意味と読み方は?
ニホンイノシシの学名はこちら。
- 「Sus scrofa leucomystax」っていうんだ。
どんな意味なのでしょう。調べてみました。
Sus (スース) = イノシシ属
scrofa (スクロファ) = 雌(メス)豚
leucomystax(レウコミュスタクス)=???
leucomystaxの意味はわかりませんでした。
ただ、Sus・scrofaだけでも「イノシシ」なので「ニホン」のニュアンスがあるのかな…?と想像しています。
- 追記
このコラムをご覧いただいた方から、以下の情報をお寄せいただきました。
イノシシの学名についてですが、leucomystaxには
「白い髭」という意味があります。
日本のイノシシのことを white-moustached pig ということもあるそうです。
以下の書籍(『日本動物誌』(シーボルト))からの情報ですが、
言語の関係で読むことができずWikipediaからの引用とな ってしまうことをお許しください。
von Siebold, P. F. (1842), Fauna japonica sive Descriptio animalium qu, in itinere per japoniam suspecto annis 1823-1830, Volume 1, Müller, pp. 57-58
Wikipedia引用 https://en.wikipedia.org/wiki/
Japanese_boar
- なんて親切な…! メッセージ送ってくださった方、(生態学を専攻する学生さんとのことです) 貴重な情報、ありがとうございます。
- なるほど、口から頬にかけての白い毛は、ニホンイノシシの特徴のひとつなんじゃな…!
ニホンイノシシは、力持ち
ニホンイノシシは、高い身体能力の持ち主。
走るスピードは、ヒトの短距離走の世界記録よりも早く、助走なしで1m以上の高さの柵を飛び越える、ジャンプ力も持っています。
また、とても力持ちで、オスで70kg以上、メスでも50~60kgの重さの石を動かす事もできます。
- 石の下にいる虫がごちそうなの♪ あらよっと! (ゴロリ)
ニホンイノシシの豆知識 まとめ
- 今日のまとめだよ。ぼくたち、日本イノシシは…
・とっても力持ち! 60kgの石でも鼻で転がしちゃえるよ。
・石の下にいる昆虫は、僕たちのゴチソウなんだ♪
・ヒヅメは、爪のような薄い層の事を言うんだ。
・偶蹄目(ぐうていもく)のグループ。ヒヅメが偶数なんだ。
・鼻は繊細な動きをして、感触を確かめたり、挨拶にも使うよ。
- 僕たちのこと、知ってくれて、ありがとう!
この「生態メモ辞典」のコラムでは、ほかにも、日本の生き物の暮らしを紹介しています。
シリーズをはじめたばかりですので、まだヒヨコのようなコーナーですが、ゆっくり育ててまいります。
\ぼくたちが日本の生き物を解説するよ! ゆっくり見ていってね/