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長野県栄村で活動するNPO法人です。被害や復興の状況を、理事である松尾真のレポートを元に更新していきます。

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* とても素晴らしかった白鳥のお祭り

 本レポートNo.144(5月7日付)で白鳥のお宮(高久山神社)を紹介し、「今年は白鳥のお祭りを見に行きたい」と書きました。そこで、14日夜、白鳥のお祭りを見に行ってきました。柳在家のちょうちん行列を見てから駆けつけましたので、白鳥に着いたのは集落の真ん中でさいとり舞が始まった直後でした。
 いきなり目に飛び込んできたさいとり舞の鮮やかさに圧倒されました。


 最近では、舞い手の小学生の子どもが少なくなったことから、さいとり舞が行われる集落が減ってきています。ですから、さいとり舞を見られること自体、希少価値があるのですが、これまで見たさい中で最も鮮やかな舞いで、強烈な印象を受けました。
 舞っている3人はいずれも女の子のようです。箕作集落では今年の祭りから女の子がさいとり舞を担うようになったようですが、白鳥の人にお聞きすると、「もう10年以上前から、男の子も女の子もみんな平等に祭りのいろんなことをやるようにした」とのこと。たしかに、舞いの周りで笛を吹く若者を見ると、女性がたくさんいて、ほぼ半分を占めているようです。


 さいとり舞に続く獅子舞、これまでに見た獅子舞とはかなり異なるもので、とても迫力がありました。
 獅子舞の最中、獅子のしっぽを担当している人は森林組合でよく見る顔で、広瀬将文さんだとすぐに分かりました。獅子は誰がやっているのだろう? 集落の人に尋ねてみると、私が栄村を訪れるようになった頃から知っている月岡大輔さんだとのこと。その名を聞いて、「そりゃ、バッチリだ」と思いました。舞いが終わった後、声をかけ、写真を撮らせてもらいました。

 
獅子による悪魔祓い、右が広瀬将文さん    月岡大輔さん

* 2時間かけてお宮へ進む天狗
 白鳥のお祭りでいちばん楽しみにしていたのが天狗さんでした。
 集落の真ん中でのさいとり舞い、獅子舞が終わった後、いよいよ、たいまつを手にした天狗が姿を現わしました。白鳥の天狗のお面は目のところにほんの小さな穴があるだけで、お面をかぶるとほとんど何も見えないといいます。そのため介添役の人が付いています。


 「天狗がお宮に行くまでは時間がかかるよ」と、事前に白鳥の人から聞いていました。14日夜、実際に見ると、集落中心部を出発したのが午後10時、そして、お宮の鳥居で注連縄を切ったのは日付が変わった後の0時8分頃。その間の距離はわずかで、普通に歩いて5〜6分程度のところです。
 天狗がたいまつを振り回しながら5歩、10歩と前へ進んだと思うと、「ドドド、ドドド」とそれ以上に後退します。そして立ち止まり、しばらくして少し前へ進み、また、先のように、前進と後退をします。
 いちばん時間を要したのが集落中央部からまっすぐ進んできた道をお宮方向に曲がり、鳥居の手前に来てから。曲がり角から鳥居まで20m足らずです。そこで30分間ほど30分間ほど一進一退を繰り返した後、ようやく注連縄を切って、後はいっきにお宮への石段を駆け上がるのです。


鳥居の注連縄の前で(注連縄切りの瞬間は残念ながら撮れませんでした)

 その後、お宮で再び。さいとり舞い、獅子舞の奉納があり、終わったのは午前0時半をまわっていました。
 お祭りに登場する灯篭、屋台(山車(だし)の一種ですね)なども色鮮やかで、とても素晴らしいもの。これらも写真を紹介しておきたいと思います。


灯篭は各常会から1本ずつ。


 屋台にはさいとり舞いの女の子が乗っています。屋台の曳き手は元々は新婿と決まっていたそうですが、最近は新婿がいないこともあるため、元気のいい若衆が曳いています。
 
 祭りにつきものはお神酒です。白鳥では「接待係」と呼ぶのかどうかわかりませんが、獅子がお宮にむかって歩む間、沿道の人びとにお神酒が振る舞われます。そのときの盃がかわっています。竹で作られたものなのです。私は車の運転があるのでお神酒をいただくわけにはいかなかったのですが、「香りだけでも嗅いで」と言われ、鼻を近づけてみると、とてもよい香りでした。


 ところで、前頁に書いた天狗の歩みに要する時間の長さはじつに不思議なので、翌日、白鳥の祭り関係者にお尋ねしました。すると、出発点から鳥居前の曲がり角までの間に松明(たいまつ)を4本、さらに鳥居の前で3本、燃やし尽くさなければならないという決め事があるからだそうです。面白いですね。

* 人の多さに驚きました
 ここまで書いてきたように、いろんな面でその素晴らしさに圧倒された白鳥のお祭りですが、もっとも驚いたことに、お祭りにやって来た人の多さがあります。とても賑やかです。
 なかでも、若い人、とくに若いカップルの姿が目立ちました。集落の人にお聞きすると、「そんなに若者はいないんだけどね」と言われるのですが、様子を見ていると、集落の人と親しげに会話しているカップルも多く、現在は白鳥に居住していなくても、近隣地域などに住んでいる白鳥の若者なのではないかと思われます。
 また、高齢の方も、道脇などにどっかり腰をおろして、お神酒を口にしながら、知り合いの人と談笑しつつ、鳥居前で天狗の到着を待つ人など、たくさんの人が祭りに出ておられました。
 
* 村の再生(復興)の力がここに宿っている
 白鳥の祭りで驚いた人の多さは、他の集落の祭りやそれに関連する行事でも強く感じたことです。とくに子どもの多さに驚きました。ある集落の祭り関連子ども行事をみると、平素の集落内の子ども人数が13人(現在、仮設住宅に住んでいるケースを含む)であるのに対して、祭り行事には40〜45名の子どもが参加していました。その差の30名前後の子どもたちはすべて集落の人のお孫さん(あるいは、ひ孫)であることが判明しています。


魚のつかみとりに夢中の子どもたち(野田沢)

平素は村外で暮らすこれだけの子どもたちを村の祭りに連れ帰る村出身の人たち(=現在も村で暮らす人の息子・娘、あるいは兄弟姉妹)がいるということなのですね。この人たちの村への思いはけっして冷めたものではなく、熱いものだと思われます。そして、この人たちの子どもたちは村の良さを存分に味わったことだと思います。村の自然の豊かさ(集落の中の小川で魚のつかみ取りができる等)や食べものの美味しさ、そして、花火遊びを思いっきり楽しめる空間があり、一緒に遊べる仲間がいること、等々。
 村との強いつながりがある人たちがこんなにもたくさんいるのです。これほど力強いことはありません。


花火に興じる子どもたち(青倉) 

 もちろん、いま、村外(主として東京や長野などの都市部)で暮らす村出身者は、それぞれ都市部に仕事があり、簡単に村にUターンできるわけではありません。Uターンしたいとは思ってはいても、定年までは無理という人、自分はUターンしたいと思っているが、家族(とくに都会で出会い結婚した奥さん)が反対しているというケース、あるいは、そもそも村出身者自身がUターンなど夢にも考えたことがないという人…、さまざまなケースがあるでしょう。
 Uターン者を増やしたいと思っても、一筋縄にはいきません。
 しかし、祭りに帰ってくる人がこれだけいるという事実は、やはり超重要です。

 この人たちに、村がいま直面している現実・課題がどれだけ伝わっているかが問題です。たしかに、家族間の会話・連絡の中で、ある程度の情報は伝わっていると思います。しかし同時に、家族間であるからこそ、震災復興・村再生にむけて、村がいまUターンをどれほど切実に求めているかをストレートには伝えにくいという現実もあるはずです。

 そこで、それぞれの集落で、さらには村全体で、村出身の人たちに村の現状や課題を伝えるニュース(新聞)のようなものを定期的に届けることを考えてみてはどうでしょうか。
 たとえば、東京栄村会は震災を先後する頃から、活動が活性化し、栄村出身者のみなさんに村の情報を伝える活動を活発に展開されています。ただ、会員のみなさんは東京近辺にお住まいですから、栄村の日々の出来事や直面している課題などをビビッドに取材し、伝えることには困難があります。村側からの情報発信が不可欠です。そこが打開されれば、村出身者の故郷(村)を思う心はもっともっと豊かで多様なものになっていくでしょう。

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