カヤネズミの川柳企画へ、こめた思い

カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

 

全国カヤネズミ・ネットワーク主催の川柳コンクール企画で、クリアファイル用のイラストを制作しました。

 

2018年 最優秀賞の川柳はこちら。

 

「カヤ刈りの ごほうび見たよ カヤネズミ」
 受賞者:オクラの花 様

 

  

カヤネズミの川柳企画とは

 

2010年より年に1度、一般より広く公募しているコンクールで、今回で第6回目。

 

最優秀賞の句ををモチーフにしたイラストグッズを作り、プレゼントする企画です。

クリアファイル カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

グッズ展開は、これまでの川柳はポストカード化だったのですが、今回は初のクリアファイル化となりました。

 

収益金はカヤネズミの保全活動に充てられています。

 

カヤネット公式サイトからの通信販売、琵琶湖県立博物館のミュージアムショップでもお買い求め頂けます。

 

Twitterやwebサイトを通じ、カヤネズミファンも、カヤネズミを知らない方にもお届けできるよう広く告知いたしました。

 

応募頂いた方のご感想では、この企画をきっかけに「カヤ原やカヤネズミを知った」という声が届いています。

 

カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

この企画のコンセプトは、川柳を考える上で、カヤネズミの暮らしを調べたり、カヤ原に思いを馳せたりする機会が生まれる事。

 

作品を生み出すこと。

それはそのまま、テーマへ深く心を寄せる事なんだと思います。

 

創ることはつまり、観察すること、考える事、感じることなんですね。

実際に、ご応募頂いた川柳は感性が研ぎ澄まされていて、ハッとする作品がとても多いです。

ひとつひとつの作品に、ひとりひとりの、カヤ原へのまなざしが表現されていて、どれも繊細で美しい。

 

生み出された川柳の数だけ、ひとりの心の中に、カヤ原との豊かなつながりが生まれたんだなぁ、と思うと胸がフワリと暖かくなります。

    

2018年度は、過去最高の応募がありました

主催のカヤネットによると、今回は過去最高の225作品のご応募が集まりました。ありがとうございます。

   

今回で第6回になりますが、川柳企画を通じて、カヤネズミの認知度もジワジワ上がってきているのかも…?と思うと、胸が踊ります。

   

親子での参加や常連の方の投稿、「毎回、カヤ川柳を楽しみにしている」とのお声もあったとのこと。

   

小さな生きもの達を描いているイラスト作家として、本当に嬉しいです。
   

   

カヤネズミとは?

さて、この企画の主人公のカヤネズミをご存知でしょうか。

 

カヤネズミは、日本の草地にそっと暮らす、日本で一番小さなの野ネズミ

 

草地が減ったことにより、生息が確認されている都府県の8割で、絶滅が心配されています。

 

主催の「全国カヤネズミネットワーク」は、カヤネズミの生息地保全を目指して活動している、ボランティア団体です。

 

川柳企画の主催:全国カヤネズミ・ネットワーク

 

私自身、日本にの小さな生きもの達の為に絵で役に立ちたい!という夢があり、大学生の時より参加しています。

 

大学での論文のテーマも「カヤネズミと人のつながり」でした。

 

大学生の頃の私は、環境保護を考えると「人間ってそもそもいないほうがいいんじゃないの?」…とかなりマイナスな考えを持っていました。

 

ところが研究でわかったことは、カヤネズミが、大昔よりヒトと自然のつながりの中に生きてきた野生動物だということ。

 

カヤネズミは、私の中で”絵×生きもの”のその後の活動を方向づけてくれた存在。

 

人って、いていいんだ。

 

人って自然の一部なんだ。

 

人も自然も豊かになる方法は、ちゃんとある。

 

だからきっと、自分にできることが、何かある。

カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

   
許されたような、未來が見えたような…

 

あたたかい気持ちにしてくれた、そんな生き物なんです。

 

以来、ライフワークとして10年以上カヤネットでの活動を続けています。

    

   

カヤネズミのイラストで大切にしたこと

今年度の受賞作の川柳はこちら。

 

「カヤ刈りの ごほうび見たよ カヤネズミ」
(受賞者:オクラの花 様)

 

カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

 

この川柳が生まれた背景を詳しく伺いました。

 

受賞者の方はお茶の名産地、静岡県の「茶草場(ちゃくさば)」を舞台に、この句を詠まれたとのこと。

 

カヤネットに届いた受賞者の方のコメントを引用させていただきます。

 

この度は最優秀賞のお知らせ、

びっくりと同時にとてもうれしく思います。

 

夫の実家は茶農家です。茶草場のカヤを刈ります。

 

茶草場のカヤを刈る時カヤの中に、

巣がくっついているのをよく見かけました。

 

運がよいとカヤネズミが飛び出してきます。

とても可愛いですよ。

 

本当にありがとうございました。

私は、この受賞作の俳句をきっかけに初めて「茶草場」という存在を知りました。

 

今回の舞台となる茶草場とは、どんな場所なのでしょうか。調べてみました。

   

   

   

茶草場とは?

茶草場とは、お茶畑の周りで手入れされている草地。

 

いいお茶を育てるため、秋になると茶草場から肥料となるススキを刈り取り、茶畑に敷き込むとのこと。

 

静岡県のお茶農家で見られる特徴的な光景のようです。

 

この茶草場は、豊かな生き物の住み処を創り出していることから、世界農業遺産に認定されています。

 

おいしいお茶を作り出すと同時に、茶草場は生き物たちにとっても、良質な住処となっているようです。

   

   

 

日本の多くの草地は、人の手で維持されてきた

この事で、学生の頃の研究…そして大切にしたいと思った事が胸にグッと蘇ってきました。

 

当時研究してわかったのは、ほんの150年前まで、日本に多く存在した草地は、人の手で維持されてきたこと。

 

雨がよく降る日本では、草地の多くは放っておくと、ヤブ地や林に移り変わって消えてしまいます。

 

茅ぶき屋根や肥やしなど、草は日本人の暮らしのあらゆる所で使われていて、毎年、丁寧に刈り取りされてきました。

クリアファイル カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

昔の日本に豊かな草地が存在していたのは、人が手入れを続けてきたからなんですね。

 

カヤネズミの減少の1番の原因。

 

それは乱獲や駆除ではなく、草地が消えていったこと。

 

つまり人の暮らしから、草が消えたことが一番の大きな理由でした。

 

それまで私の中の自然破壊は、人が自然に手を加えることでした。

 

一方、カヤネズミは、人が自然に手を加えなくなったことで、消えていった生き物。

 

カヤネズミは、人と自然の豊かなつながりのシンボルのように感じられたのです。

   

草地と、小さな生きものへのまなざし

茶草場農法を紹介しているWEBサイトで、こんな素敵な言葉を見つけました。

 

静岡の農家は、ひと手間かけて
良いお茶作りに励んできた。

 

そのお茶生産が、
豊かな生物多様性を守っている。

 世界農業遺産「静岡の茶草場農法」

 

おいしいお茶をつくること・お茶を楽しむ事。

 

それがカヤネズミ達、小さな生き物たちの住み処を創ることにもつながっている…。

 

作ることや、味わうこと、幸せな事が、さらにプラスの事につながっている。

 

人の暮らしと自然保護は、必ずしも対立しているわけではなく、両方豊かになる道が、実はある。

 

そう思えると、胸が暖かくなります。

 

何より、未来のことや、色んな課題を考えるときも「どちらも笑顔になれる、うまくいく道はきっとある」とワクワクしてきます。

 

人にとっても、生き物にとっても、プラスになる。

 

そんな暮らしのあり方は、人が自然をどうとらえているのか…まなざし抜きには語れません。

   

川柳は、まなざしのアート

今回、大賞となった川柳のとても素敵なところは、まなざしの優しさ。

 

「カヤ刈りの ごほうび見たよ カヤネズミ」

     

大変な作業である草刈りをしなくても、化学肥料などで茶葉を育てることは出来るとは思います。

 

お茶農家さんにとってカヤ刈り本来の目的は、美味しい茶葉をつくるため。

 

ただ、それだけではなく、カヤネズミの存在まで含めてカヤ刈りをされてるんですね。

 

「生物多様性」…「伝統的農業の意義」…

 

自然保護を考えたり本を読んだりすると、私はどうも難しく考えてしまいがちになります。

それを「ごほうび」というシンプルな言葉で表現されているところが、素敵な感性だなぁと感じました。

川柳はたったの五・七・五の言葉の世界です。

 

洗練された言葉は、その分深く胸にささります。

 

どう、世界を見るか。

 

川柳の音の響きに広がる、優しく・愛しい自然へのまなざし。

 

川柳って、まなざしのアートなんだなぁ…と、感じました。

 

   

カヤネズミ達と、四季の風を感じる絵作り

身近な自然への美しさに気づくこと。

 

大切にしたいなぁ…とジンワリした愛情を感じられる事

 

それがこの企画のコンセプトだと考えています。

 

ご応募いただいた川柳はどれも、四季とりどりの美しさが広がる、日本の情景を詠んだ作品。

 

だからこそ川柳のイラスト化で、いつも大切にしていることは、季節感です。

 

その美しさや、カヤ原への気持ち・愛情を丁寧に描写することが、一番大切な所だと思っています。

 

俳句を詠んだ方や、カヤ原のカヤネズミが、どんな風や香りを感じながら過ごしているのだろう。

 

イラスト化する時は、四季それぞれのシーン、音や香りや色を描けるように心がけています。

カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

手前にみえる紫色の花は、ツリガネニンジンです。

 

刈り取りは主に晩秋、11月ごろが多いようです。

 

この時期、茶草場の周りで咲いている野草を調べ、紫色の可憐な佇まいが可愛い花を描きました。

 

ツリガネニンジンは、秋の七草であるキキョウの仲間とのこと。

 

茶草場・草刈りをする方・黄金のススキの穗・晩秋の風・秋の野花、カヤネズミ…

 

日本の美しい一瞬を彩る、名役者がズラッと揃っていたおかげで、本当に描いてて楽しかったです。

 

川柳のカヤネズミのグッズ販売中。

クリアファイル カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場川柳企画シリーズのグッズは、公式WEBサイトより1枚350円(税込)にてお買い求め頂けます。

 

川柳コンクールは全6回開催されていて、現在販売されているのは5種の絵葉書+1種のクリアファイルです。

 

クリアファイルや絵葉書など、川柳企画の収益金はすべて、カヤネズミの生息環境の保全活動に充てられています。

 

ネットからご購入される方は、全国カヤネズミ・ネットワークのサイトから通信販売をご利用いただいます。

 

クリアファイル カヤネズミのイラスト 水彩風の挿絵 茶草場

裏と表をあわせると、一枚の連続した絵になり、茅原の風景が広がります。

 

カヤネズミファンの方はもちろん、この企画でカヤネズミ達に興味を持たれた方も、是非ご活用下さい。

 

学校や職場で
  

ニホンリスのイラスト 夏毛のニホンリスの絵 日本の野生動物のイラスト Squirre illust
めずらしいね! ネズミのファイル? こんなネズミがいるの?

そんな会話につながるといいなぁという願いをこめて。

  

川柳企画の主催:全国カヤネズミ・ネットワーク
全国のカヤネズミの生息状況、営巣報告フォームなどもあります。
「カヤネズミって?」という方にも、「カヤネズミ見たよ!」という方にも、情報満載のサイトです。全国カヤネズミ・ネットワーク
Forest Story Time
いぬい さえこ
小さな生きものたちの 小さな物語を描くイラスト作家。
繊細な人のこころに、絵でそっと寄り添えたら…と思ってます。

\絵本がでました/