このコラムでは、日本の生きものを身近に感じていただけるよう、彼らの暮らしを紹介しています。
- 今日はぼく、エゾシマリスだよ!
エゾシマリスは、森林に暮らしている生きものです。
- 北海道の全域と、周辺の島々(利尻島、国後島など)に分布しておるぞ。
海岸沿いの林・都市近郊の低めの森から、標高2,000メートルの高山の森まで生息しています。
なかでも、海岸沿いのカシワの木や、ミズナラの木の林は、お気に入り。
- だって、ドングリがいっぱい食べれるんだもん♪
エゾシマリスはどんなグループの生き物?
- ぼくは齧歯目!(げっしもく) のグループなんだ
分類学では、それぞれの生き物は
〇〇目 → 〇〇科 → 生きものの名前
という順番で枝分かれをしています。さて、エゾシマリスは…
齧歯目 (げっしもく) の →
リス科 (リスのグループ)の →
エゾシマリス(種の名前)
…という分類になっています。
- げっし目は、硬いものをかじる事が得意な生き物のグループなんだよ。
エゾシマリスの学名の意味と読み方は?
エゾシマリスの学名はこちら。
- 「Tamias sibiricus lineatus」っていうんだ。
どんな意味なのでしょう。調べてみました。
Tamias (タミアス) = シマリス
sibiricus (シビリカス) = シベリアの
lineatus(リネアトゥス) = 線の文様がある
シマリスを意味するTamias(タミアス) は、ギリシア語で会計係、執事、家政婦を表現する言葉。
ドングリを貯める習性から、森の中のシマリスの役割が語源になっているとのこと。
- あとあと困らないように、資産は分散!& 貯蓄!
- うーん、しっかりモノだなぁ~
エゾシマリスは、シベリアシマリスの一種
エゾシマリスは、ユーラシア大陸に分布する「シベリア シマリス」の地域亜種です。
- 亜種ってなあに?
- 亜種とは、暮らしている地域が違うことで、大きさ、形、色などに違いが見られる種じゃよ。
分類すると、このようになっています。
(種)シベリアシマリス
・(亜種)エゾシマリス
・(亜種)チョウセンシマリス
・(亜種)チュウゴクシマリス
- 僕たち「エゾシマリス」の亜種には「チュウゴク シマリス」や「チョウセン シマリス」がいるんだよ。
エゾシマリスのシマは5本
- 僕たちの名前にもあるように、シマがトレードマークなんだ♪
エゾシマリスの特徴は、背中の5本のシマ。
黒い5本のスジがあり、すき間はクリーム色をしています。
エゾシマリスの体重・重さ
エゾシマリスの体重は、71~116g。
約100gと考えると、みかん1個分の重さのイメージです。
エゾシマリスの体長・体の特徴
エゾシマリスの体長は、約13cm。
しっぽは約11cmほどで、体長(頭胴長)に比べると、少し短め。
- しっぽは黒っぽいグレーなの。付け根の方は、茶色だよ。
エゾシマリスの顔の特徴
目の上下に白フチがあります。
目の下の白い線は、耳へと繋がっています。
- 耳のカタチは、まるみを帯びた、ひし形なんだ♪
エゾシマリスの前足・後ろ足の特徴
エゾシマリスは、前足の指は4本。
人間の手でいうとこの親指にあたる指は、突起のような形状をしています。
後ろ足の指は5本。
前足、後ろ足ともに、ピンク色のプニプニの肉球がついています。
後ろ足は、人間の足のように、細長い だ円の形ですね。
エゾシマリスの足の形状は、ヒトと同じく、蹠行性(しょこうせい)に分類されます。
- 難しい言葉だなぁ…!蹠行性(しょこうせい)って?
蹠行性・指行性・蹄行性とは
蹠行性(しょこうせい)は、動物の足のつくりの3タイプのうちのひとつ。
- これが3つのタイプだよ♪
①蹠行性(しょこうせい) ←カカトを付けて歩く 例:ヒト
②指行性(しこうせい) ←カカトを付けずに歩く 例:ネコ
③蹄行性(ていこうせい ←ヒヅメをもっている 例:ウマ
エゾシマリスは、ヒトと同じく、蹠行性(しょこうせい)の足のつくりをしています。
このため、2本足で立つのも得意。
リスの中でも、地上での活動が多いエゾシマリスですが、地上は木の上よりも見通しが悪くて危険。
よく立ち上がって、あたりを見渡しています。
- 敵にねらわれてないかな…?!
(立ち上がって)キョロキョロ!
エゾシマリスの足跡
こちらは、エゾシマリスの足跡。
- 後ろ足の方が、手前に着地しているね
ちなみに、この足跡の大きさは、6cm四方におさまるサイズ。
小さくてかわいいですね。
シマリスの爪は「かぎづめ」
器用に動く指の先には、鋭くとがった「鉤爪」をもっています。
- するどい爪をひっかけて、スルスルと器用に木を登るんだ♪
この鋭い爪は、木登りのほか、穴掘りにも とっても便利。
- 木の上でのエサ探しも、地上の暮らしも、どっちも得意だよ!
「樹上性リス 」と 「ジリス」
- ちなみに、リスの仲間にはには、樹上性リス・ジリスの2種類がいるんじゃよ
①木の上で暮らす「樹上性(じゅじょうせい)リス」
…ニホンリス、モモンガなど
②地上で暮らす「ジリス」
…マーモット、プレーリードッグなど
エゾシマリスは、地中に巣をほって生活します。
厳密に分類するなら②ジリスのグループ。
実際、日本のリス類の中では、最も地上にいることが多いリスです。
- でもね、木登りも すっごく得意なんだ。木登り大好き!
地面・木登り。
半地上・半樹上タイプのリスという表現が、実際の生態に近いようです。
エゾシマリスは雑食性
エゾシマリスは、雑食性の動物。
- ドングリだけじゃなくて、いろいろなモノをたべるよ♪
基本的には植物食で、木や草の 種、芽、樹液、花、実などが好き。(ただしキノコは食べません)
動物性の食べ物も、チャンスがあれば好んで食べます。
昆虫(トンボ・チョウ)、クモ、カタツムリ、小鳥の卵、ひな鳥も。
- 特に、子育て中のお母さんシマリスは積極的に動物性の餌も食べるぞ。
エゾシマリスの好きな植物の種は、いろんな種類がいろんな場所にあり、さらに季節ごとにも変わります。
このため、小さな体で300メートル以上、遠出することも。
- おいしい ごはんの為なら、なんのその!
- おうちに持って変えるのにも便利な、頬袋もあるもんね♪
エゾシマリスの頬袋
エゾシマリスは、食べ物を運ぶための頬袋(ほおぶくろ)を持っています。
- いっぱい入る自慢の頬袋♪
ミズナラのドングリなら6つも入るんだよ!
安全な場所に運んでから食べたり、2cmほどの穴をほって埋めたりします。
- こうしてアチコチに埋めておく事を「分散貯蔵」と呼んでおるぞ。
この分散貯蔵は、特に冬眠の準備をする10月頃に、最も行われています。
あちこちへと埋めておいたドングリは、冬眠から目覚めた後の4月~5月上旬ごろの、大切な食料。
この時期の食料の半分を占めています。
- 雪解け後、新緑が芽吹くまでは、そんなに食べ物が無いんだよね…!
保存が効かない実は、その場で食べるよ
- おっ!これは、保存できないヤツだ! さっそく食べちゃおう♪
- むしゃむしゃ!もぐもぐ!
エゾシマリスは「分散貯蔵」のほかに、冬ごもりの巣の中に貯める「巣内貯蔵」も行います。
どちらの場合でも、腐りやすい果実や動物質のエサは避けて、ドングリなどの種だけを貯蔵しています。
- 冬をこすためには、味だけじゃなくて
「長持ちするか」もよく考えて、選ばなくっちゃね。
- 賞味期限の近いものから食べていくのは、鉄則だよ。
- キッチリしてるなぁ…!
エゾシマリスは、森を育てる 種まき名人
とは言っても、埋めておいたすべてのドングリを食べるわけではありません。
- 見落としたり、どこに埋めたか、忘れちゃったり…
どこだ どこだ~?
食べられず、放置されたドングリは、森のアチコチで、そっと芽を出します。
- エゾシマリスくんは、森じゅうに色んな種を運んでくれているんだね。
- おかげで、いっそう、豊かな森になっていくのう。
エゾシマリスの豆知識 まとめ
- 今日のまとめだよ。ぼくたち、エゾシマリスは…
・背中の黒い5本のシマが特徴。
・重さは約100g みかん1個分ほど♪
・前足の指は4本、後ろ足の指は5本だよ。
・雑食性で、ドングリのほかに昆虫や草や花も食べるよ。
・冬ごもりにそなえて、ドングリを貯食(ちょしょく)するんだ。
- 僕たちのこと、知ってくれて、ありがとう!
この「生態メモ辞典」のコラムでは、ほかにも、日本の生き物の暮らしを紹介しています。
シリーズをはじめたばかりですので、まだヒヨコのようなコーナーですが、ゆっくり育ててまいります。
\ぼくたちが日本の生き物を解説するよ! ゆっくり見ていってね/