
忙しすぎると感じた時は、一度、立ち止まること。
それが自分が好きな仕事でも、立ち止まること。
こんな事を、考えるようになりました。
忙しさは次の忙しさを呼び、果てのない焦燥感をつれてきます。
まずは、立ち止まること。
そんなときに立ち止まることで、むしろもっと、仕事を愛せるようになる。
より、プロになれる。
大好きな仕事で倒れてから、そんなことに、気づきました。
夢の仕事だからこそ、思考停止してしまうことがある。
この事を考えるようになったのは、絵の仕事を続けて10年立ったある日のこと。
仕事中に過換気症候群で救急車で運ばれたのがきっかけでした。
ストレスを起因とする、いわゆる過呼吸です。
絵の仕事をすることは子供の頃から20年間、ずっと目指してきた夢でした。
そのため、もちろん仕事をイヤイヤやってたわけではありません。
ただ、いま振り返ってみると、夢だからこそ当時の私は思考停止していたのかもしれません。
子供の頃からの夢だから、と違和感に蓋をしていた部分はあるかもしれません。
仕事は、軌道に乗っていました。
目の前が大量の仕事で埋め尽くされるようになり、知らず知らず心がすり減っていく日々。
深夜までの修正、取引先も忙しくて連絡がとれない状況、迫る締切…
複数の案件でスケジュールを管理する難しさや、締切は落とせない責任感。
土日や夜中にも仕事をして、当時の私はいつも焦燥感と不安にかられていました。
致命的なのが、絵のなんでもやさん
救急車に乗った日、病院の天井を眺めながら、あてどなく考えていました。
「絵を描いて生活する人になる」という子供の頃の夢は叶った。
でも、こんなに忙しすぎる毎日が、私の理想だったのかな?
一体私は、なんでこんなに忙しいのだろう。
一番致命的な事が「なんでも屋さん」になってしまっていたことでした。
・24時間・土日や深夜の修正もOK
・安くします
・いろんなタッチで描けます
早い・安い・なんでも描ける…。でも、ハタと気づいたんです。
これは私が絵で提供できるもののオプションであって、本質じゃないのかも?
絵の仕事の本質って何?
逆に、絵の仕事の本質を考えてみました。
お客様は私の仕事に何を求めて、お金を払ってくれているのか。
それは結局のところ「絵が生みだすいい変化」なのだと気づきました。
たとえば、いい変化とはこんなもの。
行動の変化
絵 (表紙・ポスター・商品)を見る
↓
なるほど・これいいな
↓
やってみたい・買ってみよう
心の変化
絵(似顔絵・アート作品)を見る
↓
すてき・いやされる
↓
なんだか元気になる
イラストレーターの仕事は絵が生む良い変化に、お金を払って頂いている。
いくら早くても、いくら安くても…
もっといえば、いくらキレイな絵でも…
見る人の心に何も変化を生み出さない絵には1円も制作費を払いたくないと思うのです。
見る人の心に、ポジティブな変化を生み出すこと。
絵の仕事の本質は、そこにあるのかもしれない、と気づきました。
仕事の頑張りどころとは
そう考えると、本来の頑張りところは、値引きや24時間対応ではありませんでした。
人の心によい変化を生み出す絵を描く事に、最も力を注ぐ事。
実際の所、「早いから、安いから、なんでも描ける人だから」という理由の依頼は、なかなかやり甲斐が感じられません。
この土俵の中で倒れるほど頑張っても、幸せな絵の仕事はできないのだと、10年経ってようやく気づきました。
では、絵の仕事の中で何を提供出来た時に、手応えを感じられるんだろう。
見えてきたのはこんなことでした。
絵でやりたい事×提供できる価値
絵の仕事で、何を生み出そうとしてたのか、どこにこだわってきたのか…。
アイデアで、人の心にプラスの変化を生む。
正論じゃなくて遊び心で世の中をちょっとだけ、変える。
新しい発想や絵で楽しい企画ができたとき、私はすごく手応えを感じられるし、最高に楽しい。
10年間の仕事を振り返りながら、そう思いました。
頑張りどころがわかると、手放せる
みえてきた、絵の仕事の頑張りどころ。
それは自分の強みを活かして、良い変化を生み出す絵を提供することでした。
人は、すべての事を頑張ることはできません。
早い・安い・言われたタッチでなんでも描く事を、勇気を持って手放してみました。
これまで受けていた、大幅な値引き、猛烈な短納期、寝不足覚悟の膨大な案件量…
これらの仕事は「自分ではお力になれそうない」と勇気を出してお受けするのをやめてみたんです。
収入が大きく減るのではないか…とすごく怖かっかったです。
でも結果は逆でした。
自分らしく、少なく、よりよく。
「自分の力を発揮できる」「やりがいを感じられる」「役に立ちたい」
そう考えてお受けした数少ないお仕事に、ヒアリングをして企画からじっくり関わり・提案をし・クオリティを上げることに集中しました。
同時に進める案件数もグッとしぼったので、寝不足やストレスや焦燥感もありません。
スッキリした頭で、ワクワク感を持って仕事を楽しむことができます。
お客様にも「また次回も是非!」と、喜んで頂けてひとつひとつの仕事の手応えがが強くなりました。
中には超人的に仕事をさばく人もいるのかもしれませんが、コツコツ絵を描くタイプの私は、出来ることは限られています。
手広く同時に案件を抱えても、きっと1件1件のパフォーマンスは少しずつ落ちていきます。
最大量ではなく、最深を目指そう。そう思えました。
将来像を考える事は、仕事をもっと好きになる事
心の余裕は、視野の余裕なのかもしれません。
忙しすぎて、立ち止まれるヒマなんてない…!
そう思った時ほど、一度立ち止まってほしいな。
現状にひっかかりがあるなら、一度心の違和感に向き合ってみてほしいな、と思います。
大好きなことで頑張っている人にこそ、そう思います。
大好きな事で、自分とまわりの人も幸せ出来るように。
ゆっくりでもいい。スピードを落としてもいい。
自分らしい幸せがある方向へ、1歩1歩進んで行くこと。
好きなことで成功する以上に、好きなことで幸せになることが、大切なんだ。
そう、感じています。