江戸の戯画は心が柔らかくなる展示でした

天王寺 大阪市立美術館 江戸の戯画 展示レポート 体験談

このあいだ、「江戸の戯画」(大阪市立美術館)にいってきました。

 

戯画とはざっくりいうと、笑いを誘う楽しい絵のことです。

 

絵ってこんなに自由に描いていいんだなー!と、凝り固まった頭をマッサージしてくれるような楽しい作品が目白押しでした。

 

 

江戸時代のアーティストの方々、発想が豊かすぎる…!

「江戸の戯画」展ならではの「おもしろいなー」と感じた見どころは、大きく2つ。

 

①笑い ②ゆるさ

 

学生時代に日本画を専攻してましたので、日本アートの楽しみドコロもまじえて、ふりかえりたいな、と思います。

  

  

  

①笑い

まずは戯画ですから、なんといっても見どころは笑いです。

  

天王寺 大阪市立美術館 江戸の戯画 展示レポート 体験談

  

表情からポーズから、シュチュエーションから、とにかく「ふふっ」っとなってしまう作品にあふれています。

 

金魚やカエルも猫も、擬人化されて「おるおる~こんな人~」「するする、こんな顔!」と、膝をポンポンたたきたくなってしまう絵がいっぱい。

 

江戸の時代から「こんなに笑いをテーマにした作品が数多く生み出されてきたんだなぁ…」となんだか胸があったかくなってきます。

 

アートの中でも「笑い」は、大切なひとつの要素なのですね。

 

 

  

  

1秒の「フフっ」が社会を変えるのかも…。

たくさんの「おもろい」作品達に圧倒されながら思ったのは、「”笑い”は凝り固まった心に、スッと入ってくるパワーがある」ということ。

 

理屈じゃない、直接心をほぐす力。

 

どれだけイライラしていても、1秒の「フフッ」で心がほぐれる。

 

なにもそれは、爆笑でなくてもいいのかもしれません。

 

多くの人がストレス抱えまくる現代社会。

 

1秒のほほえみは心の栄養や休息になります。

 

だからこそ笑いはこれからの時代、大切なキーワードになるのかもしれません。

 

というのも、現代のものづくりでは、モノが溢れ、ただ質が良いものを追求するだけでは、選ばれにくい時代になっていると言われています。

 

天王寺 大阪市立美術館 江戸の戯画 展示レポート 体験談

  

今回の展示、鑑賞する人がニコニコしたり、ワイワイつっこんだりしながら楽しんでいるのが印象的でした。

 

人の心に直球でとびこんでくる「ちょっと笑える要素」。

 

「笑顔力」とも言えるのかもしれませんが、これからデザインを考える上で、大きなエッセンスになるのかも…!と感じました。

 

  

  

だれかを 笑顔にすること

また、世の中の色んな問題は、慢性的なイライラ状態が生み出している事がほとんどだと思うのです。

 

公共心を持てなかったり、人に冷たくあたっちゃったり、不要なトラブルを生んだり…。

 

やさしい気持ちの時に、誰かに意地悪はできないし、ポイ捨てやら軽犯罪も、だいたい心に余裕がない時に発生しているように思うのです。

 

放っておけば勝手にストレスが溜まっていく毎日。

 

そんな日々でも、1秒の「フフ」で心がフワリとほぐれる。

 

昔ACのCMでみた、「おおらかな気持ちでいることも、立派な公共心です」というフレーズが今でも頭に残っています。

 

日常の中に、1秒でも笑顔を生み出すポイントがたくさんあれば、世の中は1mmずつでもいい方にきっとかわる。

 

え、笑いって、実はすごい事なのかも…!?

デザインや絵の仕事は、世の中に何かを生み出す仕事。

 

「笑顔の力」で世の中をほんのすこし、よくする。

 

だいそれた事はできないけど、そんな気持ちを持って目の前の仕事にあたっていけたら、楽しいなぁと思いました。

  

  

  

  

 

②ゆるさ

二つ目の見どころは、ゆるさです。

 

今回の戯画展、ヒジョーに「ゆるい絵」が多いです。

 

この猛烈に「ゆるい」感は、くせになる…!

一筆でサラッとか描かれてたり、シュチュエーションが現実離れしまくっていたり、タッチも世界観も、美しいまでに、ゆるいです。

  

天王寺 大阪市立美術館 江戸の戯画 展示レポート 体験談

  

大根くわえさせられる地獄…!?

 

そして、若干幸せそうなこの表情…!?

 

一体、なんなんだこれは…!

 

タッチもゆるい… ゆるすぎる…! そこがいい!

 

理屈で考えてたら、逆立ちしてもたどりつけない世界です。

 

戯画では特におもしろさを追求しているので、よりこのゆるさが強調されてますが、日本画全体でみたときも、この傾向はあるかもしれません。

 

  

    

 

日本画は感覚のシェアのアート

天王寺 大阪市立美術館 江戸の戯画 展示レポート 体験談

  

リアルな表現を追求してきた西洋画にくらべて、日本画は感覚的なアートの世界と言われています。

 

「これ、こんな感じがしたの」「こうしたらなんだか面白いでしょ」といった感覚のシェアに重きが置かれているのもm特徴のひとつ。

 

現代でいうところの「あるある~」や「いいね!」を共有する感覚かもしれません。

 

この感覚のシェアを語る上で、はずせないのが日本画の表現特有の「間」です。

 

完璧・正確であることよりも、どこか「隙(スキ)」や「間」があるところが、日本画の魅力。

 

天王寺 大阪市立美術館 江戸の戯画 展示レポート 体験談

  

背景をばっさりと省略したり、大胆にデフォルメしたりする。

 

そうすることで、解釈を見る人の心にゆだねる部分が多いのが特徴です。

 

繊細なタッチで緻密に表現している絵でも、主題ではない部分は大胆に略してある構図が多いです。

 

味わう余地・感じる余地・想像できる余地が多いアートと言えるかもしれません。

 

  

  

  

  

「ゆるさ」から生まれるコミュニケーション

目に映るモノを、正確にすみずみまで描ききってしまうと、完璧すぎて心が入っていきにくいものです。

 

キレイだけど、印象に残らない絵、特になんとも思わない絵もありますよね。

 

ツッコミどころや、ゆるっとしたした感じ。どうとでも想像できる余白…。

 

「ゆるさ」があるからこそ、見る人との対話が生まれるのではと思います。

  

  

  

いい意味での「ツッコミどころ」が鍵

そもそも私はアートというものを、コミュニケーションだと考えています。

 

日本画アートに漂う、絶妙な”ゆるさ”

 

そこから生まれる「いい意味でのツッコミどころ」が魅力のひとつだと思うのです。

 

見る人を決して不在にさせないのが、力のあるアートかもしれません。

 

想像だったり解釈だったり、感じ方だったり、はたまたリアルな「どうしてこうなった!?」というツッコミだったり…。

 

見る人の中にツッコミ所のある絵は、印象強いですよね

 

これはつっこまずには、いられない…!

(ワナワナ…)

作品になにかを言いたくなってウズウズしちゃう感覚って、楽しいです。

 

作品だけで完結していない。

 

自分がそこにいる感覚です。


「笑いはボケとツッコミがあって初めて成立する」という言葉を思い出しました。

 

もちろん、アートは必ずしも「笑い」を目指すものではありません。

 

ただ、見た人がツッコミをいれて、はじめて成立する。

 

この原則は、すごく深いなぁと再認識しました。

 

ものを作る時、正確であれば、質を極めれば、よいという事ではないのかもしれません。

 

見る人の心が入れるように、スキマを大切にする。

  

スキマを愛することが、大切なのかもしれません。

 

楽しくも絶妙に”ゆるい”作品達に、戯画の持つパワーをたっぷり堪能できました。

  

  

  

 

頭と心がほぐれる展示でした。

私はついつい物事をド真面目に考えてしまうところがあります。

 

なので、今回の展示は、

 

こんなに自由にものを描いたり、考えたりしても、OKなんだなぁ

 

と頭がスコーンと爽快になりました。

 

楽しい表現は、粋で、かっこよくて、力がある。

 

天王寺 大阪市立美術館 江戸の戯画 展示レポート 体験談

 

笑いを愛すること。潔いまでのゆるい世界と表現

 

新鮮な価値観が、脳内にインストールされた感覚です。

 

「最近肩っていうか、頭が凝ってる気がする…」

 

そんな方にこそ、遊びに行ってほしい特別展です。

 

アタマとココロをほぐしたい方はぜひ、足を運んでみて下さい♪

 

 

展示データ 特別展『江戸の戯画~鳥羽絵から北斎:国芳・暁斎まで』
天王寺 大阪市立美術館 江戸の戯画 展示レポート 体験談
会場:大阪市立美術館 (天王寺公園内にあります)
最寄り駅:天王寺 会期:4月17日~6月10日
入館料:1400円
Forest Story Time
いぬい さえこ
小さな生きものたちの 小さな物語を描くイラスト作家。
繊細な人のこころに、絵でそっと寄り添えたら…と思ってます。

\絵本がでました/