
夏休みになって、防犯ポスターづくりのお話が、たくさん読まれるようになりました。
上の防犯ポスターシリーズのお話は、もともとは発注者さん向けに書いたのです。
ただ、もしかして「防犯ポスター」で検索するのは、多くが学生さんなのかも?と気づきました。
そこで、この記事は防犯ポスターの宿題を抱える学生の方に向けて、使いやすいコツを紹介しております。
簡単に自己紹介しますと、私はもと商業イラストレーター。
市役所や警察署を通じて、10年以上たくさんの防犯ポスターづくりのお仕事をしてきました。
また大学時代は、環境や社会問題を専門に研究もしてきましたので、社会問題のポスターでは、少しお力になれるかもしれません。
- 防犯ポスターのコンクールに挑戦したい!挑戦するからには、いいポスターつくるぞ!
という、やる気メラメラのあたなにも( ・`ω・´)
- 宿題だからやらなきゃいけないけど、どう手をつけていいかわからない~!ぶっちゃけ面倒くさい~!
というあなたにも(о´∀`о)
少しでもヒントになったり、「やってみようかな」と思えるコツを紹介いたします。
防犯ポスターのかき方のコツ
それは「身近な題材をテーマにすること」です。
どうしてかと言うと…
防犯ポスターの宿題の目的は、「こども達の防犯の意識を高める事」だからです。
コツ1 自分の事として考えること
「描くことで、防犯の気持ちを高めることが目的」
そこから考えると、いかに自分の事として考えられるかが、ポイントです。
どこか「ひとごと」と思ったままポスターを作っても、防犯意識への意識は育っていかないものです。
- 例えば「ひとごと」とは、こんなイメージ。
「犯罪は、自分の世界の外側にいる犯罪者が起こしている。」
「その人を罰する事で、問題が解決する」
こういう考え方も、もちろんあると思います。
ただ「悪い人を罰すること」がコンセプトになると、少し、もったいないかも…と感じます。
話が自分の事から遠くなると、体温のあるメッセージが生まれにくくなるのです。
見る人にとっても、自分にとっても、新鮮な気づきを得られるポスターからは、少し遠ざかってしまいます。
また、正しいことを伝えても、人の行動が変わるわけではない、というのもポイントです。
正しいことを伝えても…
殺人はだめだぞ! 麻薬はだめだぞ! 痴漢はだめだぞ!
グウの音(ね)も出ないほど、ド正論です。
でも自分が痴漢だったとして、ド正論の防犯ポスターを見て
「そうか。今日からは痴漢をやめよう!」
と言うかな?と思うのです。
人のこころは、複雑で、奥深い。
- 正しい事さえ伝えれば、相手の行動は変わるはず!
- 「○○するな!」と強いメッセージであれば、見た人の意識が変わるはず!
私達はなんとなく、そう考えてしまうものですよね。
私も気を抜いていると、つい、そう思ってしまう事もあります。
でも、そうではないところが、人のココロのむずかしいところ。
だからきっと、人は時にぶつかったり、ケンカをしてしまうんですよね。
それはポスターも同じなのかもしれません。
きっと、大切なのは、伝え方。
正しいことをビシッと指摘する・攻める口調で注意する…
そうして、見た人のココロとケンカしちゃったら、響くポスターになれないのです。
小さな気づきを生み出す
だからこそ、私は思います。
大切なのは、正しいことより、人の心に寄り添うこと。
そして、ポスターを見た人に「はっ」という新鮮な気づきを生み出す事。
小さくても、行動が変わること。
そんなポスターが、よく効く防犯ポスターといえるのかもしれない、と私は考えています。
穏やかで、そっと、受け取りやすいメッセージ。
- そんなメッセージは、「自分のこと」として考えたときに、うまれてきます。
また「自分だったらどうかな?」と考えると、ポスター作りがとても簡単になるのです。
どうしてかと言うと…
自分から離れている題材は、掘り下げるのが大変
具体的なイメージのわかない事を「なぜ、そんなことが起きたのかな?」「どうすればいいのかな?」と考えていくのは、とても難しいことですよね。
これは、考えるのが仕事とも言える、プロのデザイナーも同じです。
関心ないもの、経験のないものを、ていねいに掘り下げるのは難しい…。
- そうは言っても、「犯罪の体験」とか「防犯への熱い思い」とか、特にないから困ってるんだよ~!
- ほんとうに、そこが悩みどころですよね…!
多くの人がそう思うと思います。
私も多くの防犯ポスターを手がけてきました。
でも、ふだんの暮らしで「防犯への気持ち」を考えることは、ほぼありません。
だから、防犯ポスターづくりのお仕事には、掘り下げるためのコツが必要でした。
次は、防犯ポスターを作るときにしている、自分の事として考えるコツを紹介します。
防犯を自分の問題として考えるコツ
犯罪って、地球の裏側…行ったこともない外国の話ではなく、今住んでる日本、自分の町でも、犯罪は起きているんですね。
ひとくちに防犯といっても、その題材は本当に色々。
例えば、こんなのがありますね。
・自転車盗難防止
・こどもの見守り運動
・夜間のパトロール
・ひったくり防止
・万引き防止
・侵入盗防止
・痴漢防止
・児童虐待防止
・万引き防止
・いじめ防止 (本来、学校内や友人間でも恐喝や暴力は犯罪です。)
ちいさな犯罪の種は、案外ちかくに。
犯罪とは、殺人や強盗といった新聞の一面に出るようなものだけではありません。
軽犯罪という言葉があります。
これは、「小さいけど、日常の中にたくさん潜んでて、ほっておくと重い犯罪につながる種」のようなもの。
小さな犯罪の種は、日常の中にチョコチョコと溢れています。
もしかしたら、見聞きしたこと、体験したことがあるかもしれません。
思い出すときのキーワードは、
「ヒヤっ!」 「ドキッ!」
「アレ?」 「これ、いいのかな?」
などが、手がかりになります。
防犯のヒントは、身の回りにある
例えば…
- ポイ捨てをしちゃった。/ ポイ捨て見たことがある
- こっそり万引きしちゃった、っていう話を他のクラスの子から聞いた…
そんな体験はありませんか。
他にも…
- 暗くなってから家に帰ったら、家族にすごく怒られちゃった。
- お母さんは何が心配で、どんな事が怖くて、あんなに怒ったのかな?
思い出せる範囲でOKです。小さなことでもOKです。
自分の中の、体験(伝えたいことの種)を、そっと考えてみて下さい。
コツは、自分の事として考えてみること
何かの体験を思い出したら、(自分は・友達は)なんでしちゃったんだろう?って考える。
どうしたら、それを止めてあげられたかな?
もしくは、
あのときの自分になんて言ってあげようかな。
と考えてみるのがおすすめです。
どうしたら、それを防げるのか調べてみよう。
- 「これ、危ないかも…」というのは思い出したけれど…
- いったい、なんて言ってあげたらいいかわからないよ~!
そんなときは、その「危ないこと」について、どうしたらいいか、調べてみましょう。
どんなポスターも、情報ゼロから、いきなり作り始める事はできません。
実際、私のお防犯ポスター作りの仕事経験から言っても、80%情報調べ、20%絵を描く、の割合です。
まずは描くための、材料を集めるのが、ポスター作りのスタート。
プロのシェフでも、材料無しで、美味しいお料理を作ることはできませんよね。
まずは調べて・知って・伝えたい思いを育てること
この「絵を描く前の工程」が、じつは一番大切なのです。
ネットで、防犯・安全対策など調べてもいいかと思いますし、最近は子供向けの防犯の本もいくつか出てます。
イラストたっぷりで読みやすい本を、ピックアップしましたので、よかったら参考にして下さい。
防犯や安全 【こどもさんにおすすめの本】
- 安全への知識はお守りです。人生でずっと役に立ちますよ。
伝えたいことばを育てよう。
①具体的な「コワイな」「困ったな」を思い出した
②どうすればいいかを、調べてみた。
3つ目に大切なのは、伝えたいことばを育てること。
絵を描く仕事をしている私が言うのも、変なはなしですが…
ここだけの話、いいポスターとは、きれいな絵が描いてあるポスターではないんです。
絵は何が描いてあるか、だいたいわかれば、十分OK。
それ以上に大切なのは「あの人にコレを伝えたい」思いをどれだけ育てられるか。
だれか一人の顔を思い浮かべよう。
友達でもいい。
親でもいい。
おじいちゃん、おばあちゃんでもいい。
ヒヤっとコワイ思いをしたときの「昔の自分」でもいい。
その伝えたい事を、まっすぐ表現できているかが大切。
たった一人がいいのです。具体的なひとり。
- その人の心に届けたいメッセージを、掘り下げてみてください。
自分の身のまわりの事を思い出す
↓
自分の言葉で、伝えたいことを考える
↓
心に届くメッセージに育つ
こうすることで、体温のこもったメッセージが生まれてきます。
ポスターの本質は、「伝えること」
「伝えること」を大切にしたポスターは、学校や町の中に掲示しても、たくさんの人の心に届く作品が生まれるのです。
防犯ポスターつくった経験は、人生のお守りになる
少しだけ、補足です。
もし、作ったポスターが評価されなくても、受賞できなくても、決して無駄にはなりません。
人生の中で、何かの問題に「どうしたらいいのかな?」と丁寧に向き合ったプロセスは、それ自体がおおきな財産です。
私はこれまで10年の防犯ポスター作りのお仕事で、色々な犯罪について深く学べたことは、全てが大きなお守りになっています。
デザインとは表現するために、知る・観察する・考えること。
私自身の経験で言っても、ポスターを作ると、ググッと防犯意識が高まるのを実感しています。
何かににまっすぐに向き合って、自分なりの考えを掘り下げることにほかなりません。
深く考えたプロセスは、一生モノの財産
私の仕事は絵を描くこと。
警察官ではないので、ふだんから防犯の事を考える機会はそうそうありません。
ただ、防犯ポスターのお仕事の前後は別。
犯罪発生率、犯罪が起こる背景…ポスターを作る為に調べたり考えたりします。
すると不思議なもので、猛烈に防犯意識が高まります。
まさに防犯メラメラモード!
- みんなー! これあぶないよー! 気をつけて!
友達・親に「知っておいて損はない、防犯知識」を話したくなっちゃうのです。
10年以上、防犯ポスターのお仕事をしてきたので、ひったくり、オレオレ詐欺、自転車盗…色々なテーマに向き合ってきました。
もちろんポスターのしごとが終わった後も、防犯メラメラモードがずっと続くわけではありません。
それでも、自分なりに深くその問題を考えた、という経験が1度でもあると
静かにジワジワとその後の人生にずっと効いてきます。
「○○の防犯知識」がインストールされた状態で生きていけるのです。
例えるなら、守備力100upした状態で、その後の人生進んでいけるのですね。
防犯の知識は、人生のお守り
私はこどものときから、怖がりで心配性で、とても気が弱い人間です。
そんな自分が大切にしている言葉が、知識こそが最大のお守りであり、世の中の理不尽や悪意と戦うためのアイテムとういこと。
防犯ポスターのお仕事は20代ではじめましたが、「若いうちに知っておけてよかった」と思うことがたくさん。
これから大人になる上で、怖い思いをすることや、思わぬ詐欺などに巻き込まれることは、あるかもしれません。
心配すると、キリがないですよね。
自分はもちろん、自分の友だち、親、大切な人… 知ってたから気づけた守れた!よかった!
そんな事が、きっと出てくると思います。
絵が好きな人は、素敵に仕上げてほしいし、そうでない人は下手でも全然いいのです。
アートの美術のコンクールならまだしも、少なくとも防犯ポスターは、「いかにキレイに絵が描いてあるか」で、評価されるものではありません。
大切な人の顔を思い浮かべて、丁寧になにかの問題に向き合う。
その経験は、ポスターを作った後も人生でずっと効いていくのです。
自分・大切な人を守る力になって、泥棒にも奪えない、キラキラした財産に変身します。
防犯ポスターを書いてみよう
以上が、防犯ポスターの書き方のお話でした。
身近な題材をテーマにすることで、キラリと光るポスターになる理由はこちら。
①ポスターの目的は考える事
②身近なことから、自分の事として考える
③伝えたい思いを育てると、光るポスターになる
- ちょっと怖かった… これはアカンな!
そんな小さなヒヤリ、違和感を大切にしてみてください。
あなたのリアルな体験や気持ちは、防犯ポスターづくりの宝の原石です。
それを磨いてください。
体温のある言葉・力のある絵、キラリを光るポスターが生まれると思います。
- 心に届くポスターになるよう、応援してます!