
防犯のポスターを作る時、どのような路線でいくか、頭を抱えてしまいますよね。
- どんな防犯ポスターが効果的なんだろう?
犯罪したらこうなるよ!って罰を想像させるもの?
目がギョロッとこちら見てるデザイン?
恐ろしい犯人がこちらを狙っているもの?
- 犯罪への注意を呼びかけるのに、ほんわか系?
まちの景色の美しさで、犯罪の発生率が変わる
まちがキレイだと、犯罪の発生率が下がる。
こんな現象を聞いたことがあるでしょうか。
犯罪心理学では「割れ窓理論」と呼ばれているものです。
割れ窓理論とは
窓が割れているのを放置すると、誰も注意を払っていないサインとなり、犯罪が起こりやすくなる現象。
人間、ゴミだらけの所では、ちょっとくらい…と思ったとしても、チリひとつ落ちてない所ではポイ捨てできません。
小さな軽犯罪、町のすさみが次の犯罪を誘発してしまうのです。
小さな防犯の取り組みが、長期目線で大きな効果に。
落書きを消す、ポイ捨て・騒音・違法駐車を取り締まる…
日々、コツコツと行う、ちいさな防犯。
地道な活動で、そこに派手さはありません。
まわりの人の心を、悲しませる、暗くさせる…
そんな小さな犯罪の芽を、丁寧にとりのぞいていく活動です。
明るく、居心地のいい街をコツコツ丁寧に作り出す。
そうすることで、重大な犯罪の種を未然に防ぐことができるのです。
ニューヨークでの成功例が有名ですが、日本でも足立区が町の美化に取り組み、犯罪の認知件数を減らすことに成功しています。
ビジネスの現場でも、ディズニーランドがこの理論を実践して成果を挙げているようです。
防犯ポスターは、町の景色の一部になる。
この犯罪心理学は、ポスターのデザインにも応用が効くのではなしでしょうか。
怖いポスター、ドキッとするポスター…
防犯のためとはいえ、気が重くなるポスターを町にベタベタ貼ってしまうと、美しい町の景観かは遠ざかってしまいます。
まちの中のポスターは、張り出された瞬間に、まちの景色の一部になります。
だからこそ、
まちの景色にふわりと調和し、心を和ませる空気感をうみだす。
…そんなあたたかいポスターが、深い所から効果を生み出すと考えています。
防犯ポスターづくりは、まちづくりのひとつ
私はデザインを考える時、決して「たかがポスター1枚」とは思わないようにしています。
ビルを建てる、施設をつくる…まちづくりとしては本当に小さな存在。
たとえポスター1枚でも、「まちの一部になって、全体の空気をうみ出す1つの存在」
寄り添ってくれるコトバ、心地よいもの、繊細なものに触れると、誰しも心がほっとします。
心がほんわりしている人が増えると、その町の雰囲気は変わります。
防犯ポスターは、まちのひととのコミュニケーション
ポスター1枚を作る時でも、どんな目線でその絵に向かうかで、仕事の精度は変わります。
短期的な効果だけなら、ギョロッと睨むポスターが、「ギョッ」としますし、最も効果的かもしれません。
でも、何もしてないのに「見てるぞ!」とギョロギョロと睨まれたり、「○○するな!」と注意されまくる…
そんなポスターがベタベタ張ってある町は、ずっと住みたい、大切にしたい町、愛しい町と思えるだろうか?
そんな風にも思うのです。
人の心に笑顔を生むことで、犯罪・環境…世の中の問題の根っ子にアプローチする。
それがアートの力であり、デザインのお仕事の本質だと私は考えてます。