
防犯ポスターを作るのって、難しいですよね。
まず、悩んでしまうのが、メッセージづくり。
- うーん…誰にどんなメッセージを考えたらいいのかな?
今回は、メッセージを作りやすくする方法をご紹介します。
それは、一言でいうと誰か一人の顔を思い浮かべること。
誰に伝えたいのかを、考える。
デザインをする時に、なにから始めたら よいのでしょうか。
わたしは まず 誰に伝えたいのか決める事、と考えています。
- え?そんな事、基本でしょう?
…と思われるかもしれません。
でも、案外ありがちな落とし穴なのです。
多いのは、フワッとジャンルだけ決めて取り掛かるケースです。
- 今回は、「交通安全」で、ポスターを作るぞー!
- (30分後)…うーん、うーん、で、なにを描けばいいの?
といった具合に、見切り発車してしまうと、行き詰まってしまうことが多いもの。
ポスターデザインは8割、情報集め
このため、まずは「届けたい人」を決めてしまうのをおすすめします。
まず、デザインの工程で大きなウエイトを締めているのは、データ集め。
たとえば「交通安全」というフワッとしたジャンルだけで、やみくもに素材集めをスタートさせた場合…。
テーマが漠然としているので、とても大変です。
- データ、グラフ、時間帯、事故率、年齢別、場所、理由etc…
- うわーっ 調べることが膨大すぎる~!
しかし、通安全とヒトくちに言っても、高齢者向けに描くのか、小学生向けに書くのがで、調べたいポイント、深堀りしたいデータは大きく変わってきます。
事故が起きる時、どこに原因があるのか、どんな行動を提案したいのか。
また、ポスターを届けたい人が、ドライバーなのか、歩行者なのかで、調べたいことも、届けたいメッセージも、違ってきますよね。
誰に、何を をハッキリと
このように「誰に伝えたいか」をハッキリさせることで、調べる内容が見えてきます。
大切なことは、この2つ。
・誰に(ターゲット)
・何を(目的)
- ポスター作りの全ての工程で、迷った時、悩んだ時、この「誰に何を」は、立ち帰りたい大切なポイントです。
ポスターを届けたい人、3つのタイプ

そこで気づいたのが、防犯ポスターのターゲットは、3つのグループに分けられるということ。
①被害者側に危険を伝えるもの
「危ない!こんな犯罪がありますよ!」
②加害者に罰を与えるもの
「見てるぞ!こんな刑罰が待ってるぞ」
③まちの人に、防犯にプラスになる行動を提案するもの。
「○○をすると、こんな効果がありますよ」
防犯ポスターを、街で見る人とは
ところで、防犯ポスターはドキッとさせるものや、コワイな!と目をひくものが多くありませんか。
- そういえば、よく見るかも…
怖い系のデザインは3つのターゲットのうち
「①被害者側への注意」
「②加害者への罰の警告」
が目的になっています。
詐欺・窃盗・性犯罪…
具体的な犯罪のシーンを描いているので、刺激が強く、恐怖心をあおるデザインが多い傾向にあります。
共感を大切にするデザイン
一方、3つ目の「まちの人に行動を提案」は、変化球のアプローチ。
安心できる暮らしの様子を提案して、こんなふうになったらいいな…と共感してもらうこと。
- あ、これなら ちょっと、やってみたいかも…!
この「まちのひと」に向けたデザインは、個人的にとても好きなアプローチです。
ポスター自体が、安心できる暮らしを描いた優しいデザインになるため、あたたかい存在として街に溶け込みます。
また、割合を考えて、ポスターを目にする人の多くは、加害者・被害者…まだそのどちらでもない、まちに暮らす人だからです。
とはいっても、これは、あくまで私の好みです。
- 防犯ポスター作りに、唯一の正解はありません。
加害者、被害者、まちのひと…
どんな人に向けたデザインにすれば、ピッタリとはまるかは、届けたい内容によっても変わります。
ただ、どんな場合においても、「誰に向けて届けたいのか」は、クリアに決めておく事をおすすめします。
ひとりに、とどけること
そもそも、なぜ具体的に届けたい人を「誰か一人」決めたほうがいいのでしょうか。
それは、たった一人に届けたい言葉の方が、より響くからです。
ポスターを作っていくと、
- あの人にはこの標語を…
- このひとには、こんなメッセージ
…こんなふうに、1枚の中に色んな人へのメッセージを盛り込んでしまう事態が起こります。
デザインのお仕事の現場では、とても頻繁に。
メッセージは、ひとりにむけて
さらには ①加害者 ②被害者 ③まちの人…属性の違うターゲット
- 全員への標語を入れましょう。せっかくなので!
という話になる事もあるのです。
こうなると、どれだけ整理しても、文字が多く、ゴチャゴチャした印象のポスターに仕上がります。
情報が多いと、一つ一つのメッセージは弱くなり、誰の心にも残らない、薄味のポスターになってしまいます。
1ポスター、1メッセージ
印象に残る=効果の出るポスターにしたいなら、ひとつのポスターで言いたい事は、ひとつのメッセージであることが大切です。
メッセージをシンプルにするには、まずはターゲットを明確に一人に決めること。
ひとは、10個のボールが一度に飛んできたら全て落としてしまいますが、1個ならキャッチできる確率はグンと上がります
ポスターを見るために町を歩いている人は、ゼロなのです。
仮に見てもらえても、およそ3秒程度のポスターは、とにかく主役をハッキリさせることが大切なんです。
メッセージを「伝えたい人」を、守り抜く
もうひとつ、大切なことがあります。
それは、一度決めた「届けたい人」を、最後まで守りぬく、という事。
私はデザイン業10年目をこえたあたりから、「目的は作っているうちに、なんだかんだブレるもの」前提に考えるようになりました。
だからこそ、
打ち合わせ・調査・着想・ラフ・コピーの立案・デザイン・修正・調整…
全ての工程で、ターゲットを振り返るようにしています。
ポスターづくりで、迷ったときは
ここは緑にする? フォント1pt大きくする? 人物が大きすぎるかな?
デザインは選択の繰り返しです。
100回…1000回と、小さな・大きな選択を繰り返し続けて、やっと1枚のポスターにしあがります。
デザイナーはゴールに向かって、その1000回以上の選択を統一させる必要があります。
すべての選択には理由があります。
- きれいだから
- かわいいから
- なんとなく…
こんな選択を繰り返していると、アレヨアレヨと、たとえキレイでも、誰向けに何を言いたいか、よくわからいポスターに変身していくのです。
そこで、選択の基準にすべきが「誰に何を伝えたいか」
大切なのは1000回の選択を「伝えたい人に、伝えたい事を、伝える」という1本の軸に通すこと。
最初に「誰に何を伝えたいか」を決めたら、壁に貼っておく。
ホワイトボードに書いて作ってる間は何回も見るようにする。
これくらいの熱量で、大切にしてください。
きっとグッと伝わるポスターに仕上がります。(昔の自分に声を大にして言いたい話です)
届けたい気持ちを、大切に
このメッセージは誰に伝えたいんだっけ?
防犯ポスターをつくる時、ときどき立ち止まりながら、考えてみることをおすすめします。
大切な人の顔、たったひとりの顔を思い浮かべて、デザインしてみてください。
- きっと、あたたかくて、心に響くポスターに、仕上がります。