
防犯ポスターを作るのって、難しいですよね。
まず、悩んでしまうのが、メッセージづくり。
- うーん…誰にどんなメッセージを考えたらいいのかな?
今回は、メッセージを作りやすくする方法をご紹介します。
それは、一言でいうと誰か一人の顔を思い浮かべること
誰に伝えたいのかを、考える。
何かをデザインをする時は、描き始める前に、誰に向けて伝えたいのか決めてしまうのが鉄則です。
たとえば「交通安全」というおおきなテーマだけで、やみくもに素材集めをスタートさせた場合…。
テーマが漠然としすぎているので、それはそれは時間がかかります。
とにかく大変です。
でも、交通安全とヒトくちに言っても、高齢者向けに描くのか、小学生向けに書くのがで、内容は大きく変わってきます。
もっと言えば、ポスターを作る為に、調べるべきポイントも大きく変わるのです。
例えば、小学生に「こんな行動をしてもらいたい」という提案がゴールなら…
・高齢者が被害に遭いやすい年齢のグラフ
・高齢者が事故に会いやすい時間帯
・高齢ドライバーが取れる対策は何か…。
どれだけ一生懸命に調査しても、子供むけのポスターに「高齢者のデータ」はチグハグな素材ですよね。
逆に言えば、誰に伝えたいかがハッキリするからこそ、調べたいデータや掘り下げるべき内容が、見えてくるのです。
大切なことは、この2つ。
①誰に(ターゲット)
②何を(目的)
この「誰に何を」はポスター作りの全ての工程での、基本になります。
何かを調べるのも(インプット)、表現するのも(アウトプット)、全てのベースがここ。
- 逆に言えば「誰に何を」があるからこそ、何をすればいいのかが見えてくるとも言えます。
防犯ポスターには主に3種類のターゲットがいる。
そこで気づいたのが、防犯ポスターのターゲットは、3種類のグループに分けられるということ。
①被害者側に危険を伝えるもの
「危ない!こんな犯罪がありますよ!」
②加害者に罰を与えるもの
「見てるぞ!こんな刑罰が待ってるぞ」
③まちの人に、防犯にプラスになる行動を提案するもの。
「○○をすると、こんな効果がありますよ」
ところで、防犯ポスターはドキッとさせるものや、コワイな!と目をひくものが多くありませんか。
- そういえば、よく見るかも…
怖い系のデザインは3つのターゲットのうち「①被害者側への注意」「②加害者への罰の警告」が目的になっています。
詐欺・窃盗・性犯罪…具体的な犯罪を扱うので、どうしても刺激的で恐怖心をあおるデザインが多い傾向にあります。
一方「③まちの人に防犯にプラスになる行動を提案するもの」は、それとは全く別のアプローチ。
もっといい町のビジョンを提案して、いい街にしたいな…と共感してもらうこと。
「ちょっとやってみたいかも」と自発的な気持ちで防犯への取り組みに一歩を踏み出せる提案をする事です。
詳しくはこちらの記事をごらんください。
もちろんポスター作りに、唯一の正解はありません。
ただ個人的にはこの「③まちのひと」にアプローチする方法が一番効果的だと考えています。
割合を考えて、ポスターを目にする人の多くは、加害者・被害者…まだそのどちらでもない、まちに暮らす人だからです。
ターゲットを決めると響くポスターになる
さて、最後にターゲットをハッキリさせる事の最大のメリットを紹介します。
それは、ターゲットが明快な方がこころに届くポスターになるということ。
ポスターを作っていくと、
- あの人にはこの標語を…
- このひとには、こんなメッセージ
…こんなふうに、1枚の中にモリモリに色んな人へのメッセージを盛り込んでしまう事態が起こります。
デザインの現場では何故か頻繁に(笑)
なんなら先程の ①加害者 ②被害者 ③まちの人…属性の違うターゲット「全員への標語を入れましょう。せっかくなので!」という話になる事もあるのです。
こうなるとどれだけ整理しても、文字も多く、内容もゴチャゴチャのポスターに仕上がります。
しかし情報量が多すぎると、一つ一つのメッセージはグッと弱くなり、誰の心にも残らない、薄味のポスターになってしまいます。
- でも、みんなが見るポスターなのに、ターゲットを一人に決めちゃってもいいの?
こんなふうに疑問に思われた方もいるかもしれません。
いいのです。たった一人に向けて描くから、体温のある、共感を呼ぶポスターに仕上がるのです。
こちらは、宿題の防犯ポスターづくりに悩む、こどもさんに向けのお話ですが、その理由を解説しています。
1ポスター、1ターゲット、1メッセージ
印象に残る=効果の出るポスターにしたいなら、ひとつのポスターで言いたい事は、ひとつのメッセージであることが大切です。
シンプルにするには、まずはターゲットを明確に一人に決めること。
ひとは、10個のボールが一度に飛んできたら全て落としてしまいますが、1個ならキャッチできる確率はグンと上がります
ポスターを見るために町を歩いている人は、ゼロなのです。
見てもらえても、せいぜい3秒程度のポスターは、とにかく主役をハッキリさせることが大切なんです。
ポスターのターゲットは、守り抜こう
さらに、ここでどうしても声を大にして伝えたいことがあります。
一度決めたターゲットは、最後までブレずに死守しましょう。
目的(誰に何を伝えたいか)は、1度決めたらほったらかしではいけません。
チームで何かを作る経験をされた方は、思い当たるコトもあるかもしれませんが目的は動く標的なのです。
私はデザイン業10年目をこえたあたりから、「目的は作っているうちに、なんだかんだブレるもの」前提に考えるようになりました。
だからこそ、打ち合わせ・調査・着想・ラフ・コピーの立案・デザイン・修正・調整…全ての工程で、ターゲットを振り返るようにしています。
そもそも、誰に何を伝えたい?
すべての表現は「伝えたい人に、伝えたいことを、伝える」ことに集約されなければいけません。
すべてのデザインの工程は、伝えたい人のために。
ここは緑にする? フォント1pt大きくする? 人物が大きすぎるかな?
デザインは選択の繰り返しです。
100回…1000回と、小さな・大きな選択を繰り返し続けて、やっと1枚のポスターにしあがります。
デザイナーはゴールに向かって、その1000回以上の選択を統一させる必要があります。
すべての選択には理由があります。
- きれいだから
- かわいいから
- なんとなく…
こんな選択を繰り返していると、アレヨアレヨと、たとえキレイでも、誰向けに何を言いたいか、よくわからいポスターに変身していくのです。
そこで、選択の基準にすべきが「誰に何を伝えたいか」
大切なのは1000回の選択を「伝えたい人に、伝えたい事を、伝える」という1本の軸に通すこと。
最初に「誰に何を伝えたいか」を決めたら、壁に貼っておく。
ホワイトボードに書いて作ってる間は何回も見るようにする。
これくらいの熱量で、大切にしてください。
きっとグッと伝わるポスターに仕上がります。(昔の自分に声を大にして言いたい話です)
ターゲットを決めれば、伝わる防犯ポスターになる
防犯ポスターづくりのターゲット決めのお話いかがでしたでしょうか。
そもそも、このメッセージは誰に伝えたいんだっけ?
防犯ポスターをつくる過程で、何度か立ち止まりながら、考えてみることをおすすめします。
「誰に、何を伝えたいか」がハッキリしているほど、ポスターのパワーは強くなります。
- 大切な人の顔、たったひとりの顔を思い浮かべて、デザインしてみてください。きっと、ぬくもりのある、心に響く防犯ポスターに、仕上がります。
ポスター制作×ターゲットの大切さ おすすめ本
一流のコピーライターによる響くメッセージの生み出し方。この本を読んで、デザインの本質は、コミュニケーションなんだと気づきました。
- 何かを生み出す時、土台となるメッセージ作りをガッシリと支えてくれる本。年に何度も読みかえしています。
”本当に大切なのは言葉じゃない。きみの気持ちなんだ”
こちらは「言葉にできるは武器になる」のエッセンスを凝縮した2018年最新刊。イラスト満載で小学生のこどもさんでも楽しく読める1冊です。
- 伝えたい人・伝えたい思いがあってこそ、ポスター作り・デザインが始まります。
気持ちを丁寧に掘り下げたい時に、手元においておきたい”使える本”です。